研究概要 |
2012年度は本調査を実施し,国内外の学会での発表と論文の執筆を行った。 1.長崎方言におけるアルファベット関連語彙の音調に関する分析 長崎方言の音調の音響的な実現に関して定量的な分析を行った。その結果,標準語と同じく下降の型が後続する語のFOに影響を及ぼす一方,標準語とは異なり統語構造との相関は見られないことが明らかになった。この結果を国際学会において発表した。 また,FM,PR,CPUといったアルファベット頭文字語や,Fチーム,D席といったアルファベット複合語に関するデータについて分析を行った。その結果,アルファベット頭文字語は外来語,アルファベット複合語は通常の複合語と同じ規則性を持つことが明らかになった。さらに,一部の複合語については,標準語の音調のパターンと相関が見られることが明らかになった。そして,以上の知見をまとめた論文を査読付きの学術雑誌に投稿した。 2.天草深海方言の複合語と外来語の音調に関する調査 天草島諸方言に関して,前年度行った調査の結果を踏まえ,深海方言に焦点を当て,複合語と外来語を中心にそれぞれ約200~300語の資料を収集した。調査の結果,標準語アクセントとの対応について,複合語に関しては長崎方言に,外来語に関しては鹿児島方言に近い規則性を持っていた。ただし,どちらの語種も完全に同じ特性を有するとも言えず,詳細にわたる分析が必要である。 3.その他の言語・方言の音調に関する調査 長崎方言に近い体系を持つ言語として,琉球語宮古諸方言のうち音調の対立を有すると思われるいくつかの方言について調査を行い,基礎的な語彙の音声資料を収集した。また,長崎から地理的に比較的近い福岡方言を対象に,これまで検討されたことのない省略表現を含む文のイントネーションについて検討を行い.国際学会において発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
主な対象としていた長崎方言,天草島諸方言のうち,長崎方言については必要な調査を行い,国際学会や学術雑誌に成果を公刊することができた。また,天草島諸方言については重要と思われる深海方言の調査を行うことができた。さらに,関連する他方言についても予備的な調査や分析を行うことができた。
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