本年度は、主に、1900年前後の帝政ロシア内務省とその所管する地方自治体(ゼムストヴォ)の活動に関する文献、資料の収集、および内務省研究史の整理を行った。まず、自治体の地方行政活動を指導・監督する内務省経済局の行政活動に関しては、本国でも研究はほとんど進んでいないことが分かった。また、同時代に作成された内務省の省史などでも、具体的な業務内容や地方自治体との関係は具体的には記述されていなかった。従って、これらを明らかにするためには、文書館の内務省経済局のフォンドにある担当部署の個々の資料を検討していく必要があろう。他方、各地のゼムストヴォの活動に関する個別研究は進展を見せており、内務省との関係に関する研究にもある程度利用可能である。 2月には9日間、ペテルプルクで資料収集を行った。ロシア歴史文書館では、今回は、特に1902年度の内務省の官吏名簿を閲覧した。この官吏名簿によって、内務省の各部局の人的構成や、各官吏の入省年、官等、学歴等のデータが得られた。ただし、官吏の職歴に関しては、内務省でのものしか記載されていないため、特に、下級官吏に関しては、他省の職歴やゼムストヴォ・貴族団における活動を明らかにすることは困難だと思われる。そのほか、19世紀末~20世紀初めの内務省の組織改革に関する資料等を閲覧した。ロシア・ナショナル図書館では、学位論文の概要書を含め、最近のロシアでの研究を収集することが出来た。帰国後、収集した資料の整理・分析を進め、1902年ごろの内務省の構造・人員・活動とゼムストヴォとの関係に関して考察を進めた。
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