本研究の目的は、大卒ホワイトカラーの早期退職の原因を、キャリア認識との関係において解明しようとするものである。そのために用いた研究手法とは、キャリア認識の変化をリアルタイムに追跡するインタビュー調査であった。これは既存の自発的離職研究のほとんどが離職行動を選択した後の回顧的なデータに依存している問題点を克服するために選択された方法である。 研究費補助金の支給が始まる以前からのインタビュイーと合わせて、25名の調査協力者に対して、半年から1年の間隔をあけながら、過去3年間にわたり調査を継続して行った。調査が行われた地域は、関東圏、東北圏、北海道の3地域である。これは地域間におけるキャリアについての意識の違いを比較するために選択された。インタビューは1回あたり40分から1時間30分程度行われ、過去3年間で71件のインタビューデータを収集することに成功した。インタビューデータはICレコーダーに録音され、研究補助員の手によりテキスト化が順次行われている。25名の調査協力者のうち、9名が調査期間中に自発的離職を選択した。 インタビューデータはテキスト化が済んだものから順次分析にかけられている。平成23年度にはこれらのうち、早期に収拾されたものを利用した分析から、ナラティヴ・アプローチの可能性が探られ、論文の形式で発表を行った。そこでは、自発的離職行動の選択に向かって、過去のイベントの持つ意味が変化し、同時に自己評価についても過去、現在、未来についてそれが変化していくダイナミズムが明らかになった。 本年度は収集された膨大なデータのテキスト化、分析をさらに推し進め、若年層ホワイトカラーのキャリア観がどのように変化するのかについての包括的な概念枠組み提示する予定である。
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