平成25年度は、1.フィールドワークの補充調査と結果の分析、2.その成果発表、3.文献調査にもとづく岡山県の概況に関する成果発表、4.住民の方々への成果還元の4点を研究実施計画として挙げた。 1.については、岡山県新見市の野原開拓と、真庭市の蒜山開拓についての補充調査を中心的に行った。先祖代々の土地ではなく「しがらみ」がない、また出入りの激しい土地である、といった中山間の農村地域としては特徴的な土地柄を有している戦後開拓地の社会構造について、開拓1世の方、その後継者の方、および近隣の既存集落の住民の方々から聞き取りを行った。 2.については、日本村落研究学会大会で「戦後開拓集落における共同性の現状 ―岡山県新見市野原集落を事例として―」という報告を行った。戦後開拓地は入植当初、「開拓地であるというアイデンティティ」が強力な凝集力となり、地域の共同性を高めていたが、その基盤となっていた社会構造における平等性や均質性をメリットとして継承していくためには様々な困難があることがわかった。 3.については、論文「戦後開拓集落の存続に関する一考察 ―岡山県下53開拓地の現況より―」としてまとめた。この中で、岡山県内の戦後開拓地のどの程度が営農を確立させ集落の形成に至ったか、形成された集落のどの程度が現在まで存続しているのか、という観点から整理を試みた。その上で、生業のあり方の相違は地域への向き合い方に対してどのように影響するのだろうか、また「開拓地であるというアイデンティティ」が地域存続に対してもつ意味とは何かという論点を、戦後開拓地の現況に関する研究課題として挙げた。 4.に関して、調査に協力して下さった地域住民の方には、これまで発表した成果(論文や報告原稿)をお渡しする形で成果を共有させていただいたが、多くの方々への成果還元までには至っていない。今後の課題としたい。
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