本年度は、質問票調査を中心に研究が進められた。その結果、3つの研究課題について、以下のことが明らかにされた。 研究課題1「介護職員のキャリア志向とサービスの質の関連性の解明」に関しては、研究対象を看護職員に拡大し、介護職と看護職では、サービスの質に与えるキャリア志向にどのような差異がみられるのかについて検討を行なった。その結果、両職種とも、仕事と組織双方へのコミットメントが高いタイプの人材が、良質なサービスを提供していることが明らかになった。 研究課題2「介護職員のキャリア志向に対応する人的資源管理施策の把握」に関しては、個人への認知面を考慮した人的資源管理施策を取り入れ、個人の知覚する人的資源管理施策とキャリア志向との関連性について検討を行なった。その結果、キャリア志向のタイプによって、適合する人的資源管理施策が異なることが明らかになった。専門職能志向は雇用保障との間に正の相関を示し、全般管理志向は公平な評価との間に正の相関を示し、自律・独立志向は適正配置との間に正の相関を示し、保障・安定志向は雇用保障との間に正の相関を示し、奉仕・社会貢献志向は業績による報酬との間に負の相関を示し、ライフスタイル志向は雇用保障との間に正の相関を示した。 研究課題3「介護職員のキャリア志向と行動特性がサービスの質に与える影響の解明」に関しては、研究課題(2)で明らかになったキャリア志向に適合する人的資源管理施策が組織コミットメントを経由して対人的援助行動に与える間接効果について検討を行なった。その結果、福利重視型人的資源管理施策は組織コミットメントを通じて対人的援助行動を促進し、能力重視型人的資源管理施策が組織コミットメントを通じて対人的援助行動に与える影響は、個人―職務適合度が高いときに顕著となることが明らかになった。
|