研究概要 |
我が国の高齢者の多くはより長く、より健康な暮らしを営むため、より自立し且つ生産的な高齢者が増えることを考えると、高齢者のために、社会経済的生産性がある役割を促進する必要があると考える。本研究では、高齢者の生産的な役割を唱える概念として生まれたプロダクティブ・エイジング(Productive Aging,PA)の枠組みを用いて、生産的活動が社会と高齢者本人にどのように影響を及ぼすかを調査した。また、高齢者のボランティア活動を推進する社会構造環境について報告した文献を参考に、どのような政策レベルの取り組みが必要かという点にも言及した。文献レビューの結果、我が国では年金、医療、介護など基本的な保障のための制度が不安定であり、それ故に高齢者がボランティアや就労等のプロダクティブな活動の確保が難しくなっていると考えられる。また、団塊の世代について検証すると、高齢者にとってプロダクティブな活動は自己実現につながるものでなくてはならない。しかし、介護保険をはじめとする日本のエイジング・ポリシー(高齢者政策)は、高齢者の身体と認知機能の維持と増進に焦点をあてた健康促進・介護予防施策であった。これらの研究結果を踏まえ、高齢者の「社会的機能」に焦点をあてたエイジング・ポリシーが必要であり、今後も自己実現をPAのアウトカムとして重視していくことが重要である。さらに、実態調査や有識者からの意見の分析を踏まえ、プロダクティブな活動へのアクセス・動機・情報・促進の4つの側面から政策を練ることが必要だと示唆された。
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