本研究では、古細菌のSulfolobus tokodaii由来のビオチン化酵素(BPL)がそのビオチン化された基質タンパク質(BCCP)と安定な複合体を形成するという性質を利用して、細胞内で標的タンパク質の機能を制御することが可能な分析システムを構築することを目的としている。前年度までの検討により、BCCPを連結した標的タンパク質を、BPLと膜タンパク質の融合タンパク質と共にヒト細胞中に発現させることにより、その細胞内での局在を制御することに成功した。今年度はまずこのような標的タンパク質の細胞内での局在制御が様々な細胞株で可能であるかどうかを検証した。具体的には、細胞株としてHEK293及び、HeLa、COS7を用いて、BCCPを連結した蛍光タンパク質(BCCP-GFP)の局在制御を観察した。その結果、いずれの細胞についても、BPLと膜タンパク質の融合タンパク質を共発現させることにより、BCCP-GFPを細胞内の膜上に局在化できることが確認できた。ここで膜タンパク質としては、ブラジキニンB2レセプター(B2R)及びPDGFレセプターの膜貫通ドメイン(TM)を利用して検討を行なったのであるが、この際、B2Rを利用した系では、標的タンパク質は主として細胞膜(原形質膜)に局在化するのに対して、TMを利用した系では主として核の外膜に局在化することがわかった。また本年度は標的タンパク質として核移行シグナル配列(NLS)を連結した標的タンパク質についてもその局在を制御できるかどうかについて検証した。BCCP-GFPのC末端にNLSを連結した融合タンパク質を利用して検討を行なったところ、この融合タンパク質についても細胞内の膜上に局在化できることがわかった。
|