研究概要 |
前年度においては,純銅粉末にカーボンナノチューブ(CNT)単分散被覆した粉末固化成形体による熱・電気伝導率の向上について調査した.CNT単分散被覆は可能であるがCuとCNTとの間で結合性が低く,固化成形体において熱・電気伝導特性は向上しなかった.そこで本年度は,CuにTiを微量添加した合金(cu-Ti)を母相として,熱処理時のTiとCNTの反応により,母相とcNTとの結合を増加させ,高強度かつ熱・電気伝導特性に優れる合金を開発し,その特性向上のメカニズムについて検討した.Cu-Ti合金粉末においても,前年度に確立した湿式手法によって,CNTを粉末表面に単分散被覆できることを確認した.0.19wt%CNr付着Cu-Ti粉末を利用した際,固化成形体の電気伝導率は83.5LACS%,熱伝導率は357w/mKを示した.いずれもCNT無添加cu-Ti材に比べて約2倍,純銅の85%の性能を保持した.CNTの添加とともに強度は若干の低下を示すが,0.19wt%CNT付着材では,YS:175.9MPaと同加工条件の純銅粉末押出材の約2倍を示す.一方,CNT付着量が過剰になると伝導率,機械的性質ともに低下する.組織観察の結果から,旧粉末粒界三重点付近にCNTの凝集が確認され,これらが粉末間結合を阻害し,諸特性を低下させると考える.TEM-EDS分析結果より,CNTが存在する旧粉末粒界付近では反応層の形成が確認された.元素量分析から,cNT無付着cu-Ti粉末押出材の素地中のTi固溶量がo.22wt%℃あるのに対し,CNT付着粉末押出材ではo.03wt%とTi固溶量が低下した.CNTと母相間はTi反応層によって結合を保持し,同時にTi固溶量の減少で母相のThermal passとElectrical passが増加することで,高強度と高熱・電気伝導率を両立した材料が作製できる.
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