本研究は、分子生物学的手法を用いて、性別不明標本の性判定を行う技術を確立することを目的とする。まず、剥製標本や骨格標本に残存するDNAの状態を確認したところ、本剥製・仮剥製・鞣し皮の毛および骨格標本の中で、仮剥製のDNAが最も良い状態にあることが分かった。そこで、仮剥製について、XとY染色体上に存在するZF遺伝子約240 bpとY染色体にのみ存在するSRY遺伝子約220 bpをPCR法によって増幅、電気泳動により各遺伝子の有無を確認することで性判定を試みた。その結果、正答率は86.7%、実験の失敗は13.3%、誤判定は0%であった。DNAの状態により実験に失敗する可能性もあるが、誤判定がないという点で、ここで試行した性判定法は十分に実用化できるものである。
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