研究課題/領域番号 |
22780077
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
岩木 宏明 関西大学, 化学生命工学部, 准教授 (00368200)
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キーワード | 走化性 / 走化性レセプター / 芳香族ニトロ化合物分解菌 |
研究概要 |
これまでに、Pseudomonas fluorescens KU-7株の2-ニトロ安息香酸(2-NBA)分解系が2-NBAではなく分解中間体により発現誘導されることが示唆されていることから、平成23年度は、分解系酵素遺伝子欠損株を構築し、誘導物質の特定を試みた。その結果、2-ヒドロキシルアミノ安息香酸ムターゼ遺伝子(nbaB)欠損株では分解系酵素の誘導が見られず、2-アミノムコン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ遺伝子(nbaE)欠損株では、分解系酵素の誘導が見られたことから、3-ヒドロキシアントラニル酸、2-アミノ-3-カルボキシムコン酸-6-セミアルデヒドまたは2-アミノムコン酸セミアルデヒドのいずれかが2-NBA分解系の誘導物質であることが明らかとなった。平成24年度は、誘導物質を特定するとともに、走化性レセプター遺伝子nbaYの誘導性について解析する。また、2-NBA分解系酵素遺伝子欠損株の2-NBAに対する走化性応答を調べた結果、nbaB欠損株では走化性応答を示さなかったが、nbaE欠損株では負の走化性応答を示した。今後、代謝依存的な走化性応答の要因について詳細に解析する必要がある。 次に、新たに環境汚染物質を認識する走化性レセプター遺伝子を取得するために、ニトロフェノール分解菌Burkholderia sp.KU-46株の4-ニトロフェノール分解系遺伝子群を取得・解析した。その結果、分解系遺伝子近傍には、走化性レセプター遺伝子は存在せず、KU-7株は特異な例であることが示唆された。 最後に、平成22~23年度に分離した海洋性環境汚染物質分解菌について、分離基質に対する走化性応答を調べた。その結果、多くの分解菌は運動性を有するものの、分離基質に対して明確な走化性応答を示さなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
制御系の解析において、2-NBA分解系の誘導物質が2-NBAではなく代謝中間体であることを明らかにすることができた。このことにより代謝依存的な走化性応答を示す要因が、NbaYが代謝中間体を認識するためなのか、nbaYの誘導性によるものなのかという新たな疑問は生じたものの、平成24年度に取り組むべき課題が明確になった。さらに代謝酵素遺伝子欠損株では負の走化性応答を示すなど新たな知見が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
2-NBA分解系遺伝子欠損株の構築を進め、2-NBA分解系の誘導物質を特定すると共に走化性レセプター遺伝子の誘導性について解析する。さらに分解系遺伝子欠損株による2-NBAおよび分解中間体への走化性応答を解析するとともにnbaY遺伝子が代謝酵素欠損株において走化性を相補できるかを調べることでNbaYが認識する化合物を特定し、KU-7株の代謝依存的走化性応答の機構を明らかにする。
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