研究概要 |
Pseudomonas fluorescens KU-7株の2-ニトロ安息香酸(NBA)分解系遺伝子(nbaA, B, E)欠損株を用いた解析により、これまでに、NBA分解系の真の誘導物質は代謝中間体である3-ヒドロキシアントラニル酸、2-アミノ-3-カルボキシムコン酸-6-セミアルデヒド(ACMS)または2-アミノムコン酸セミアルデヒドのいずれかであることを明らかにしている。本年度は、更に遺伝子(nbaC, D)欠損変異株を構築・解析することにより、ACMSがNBA分解系の真の誘導物質であることを明らかにした。次に、RT-PCRによりNBA走化性レセプター遺伝子nbaYの転写解析を行った。その結果、NBA添加培養時のみnbaYが転写されること、初発酵素遺伝子nbaAとnbaYはオペロンを形成していることが明らかとなり、nbaYもACMSにより誘導されることが示唆された。この結果より、KU-7株のNBA代謝依存的な走化性が、NbaYが代謝中間体を認識するためではなく、単に酵素遺伝子欠損変異株ではnbaYが転写されないことが原因である可能性が考えられた。今後、代謝依存的なNBA走化性は、単にnbaYが誘導されていないためなのか、NbaYが代謝中間体を認識することとの複合的な要因によるものなのかを検討する予定である。 次にNBA走化性がNBA分解能に及ぼす影響について解析した。NBAを炭素源とした液体培地および寒天培地での野生株と走化性欠損株の生育速度には有意な違いは見られず、滅菌土壌に菌体を均一に散布した系においても、NBA分解能に有意な差は見られなかった。一方、土壌の一点に菌体を接種し、接種位置から離れた位置のNBA濃度を調べたところ野生株での分解率が高く、走化性が物質分解に有利に作用することが示唆された。
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