近年の木質構造研究の進展により、木質構造物の耐震性は極めて希に起こる大地震に対しても倒壊しないレベルにまで十分高められた。しかしながら、木質構造物が長期にわたって使用される中で、様々な使用環境下での劣化の進行による耐力低下や変形性能の低下などは不明な点が多い。そこで本研究では、木質構造の耐震性に深く関わる面材張り耐力壁とその釘接合部に着目し、水分の進入による劣化を焦点に、長期使用下における耐久性評価と、事故的に起こる水掛かりによる耐力低下に関する研究を行うこととした。 平成22年度は、木質構造物の耐力壁に最も一般的に使用されている面材料である構造用合板を対象に研究を行った。まず、国内外で木質材料や接合部等の耐久性評価に用いられている試験・評価法を整理した。次に、単板構成の異なる構造用合板と2種類の釘を用いて釘接合部試験体を作成し、乾湿繰り返し処理(耐久性評価)及び水中浸漬処理(事故的水掛かり評価)を施し、無処理の試験体と共に接合部の加力試験を行った。得られた試験結果より耐力の残存率を実験的に求めた結果、合板の単板構成や釘種類の違いにより多少の変動はあるものの、乾湿繰り返し処理で平均0.98、水中浸漬処理で平均0.99と高い残存率を示した。 平成22年度は試験・評価方法の検討と基本的な実験データの取得が中心であったため、学会発表や論文投稿まで到達できなかったが、次年度には今年度の成果を取り纏め、学会発表等を行う予定である。
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