本研究では、静脈注射という簡便な手法でマウス生体内への遺伝子導入を行い、当該導入遺伝子を組織特異的で強力に発現させることを目指した研究を行っている。本年度は、本研究で使用するプラスミド遺伝子の構築、生体内遺伝子導入に用いる独自の遺伝子導入担体の作製、当該担体と市販の遺伝子導入試薬による遺伝子導入条件の基礎検討を行った。詳細は以下の通りである。 1.プラスミド遺伝子の構築 2種類のマーカー遺伝子を構築した。1種類は、CAGプロモーター制御下でEGFP(緑色蛍光)とルシフェラーゼを発現するプラスミド遺伝子である。もう1種類は、CAGプロモーター制御下にloxP配列が存在しており、通常はHcRcd(赤色蛍光)が発現するが、Cre酵素の作用によりHcRed遺伝子が切り出されると、代わりにEGFPとルシフェラーゼが発現するプラスミド遺伝子である。これらは、EGFP発光によるリアルタイムな遺伝子発現の確認と、ルシフェラーゼによるプロモーターアッセイが同時に行えるため、本研究以外での用途も期待できる。また、Cre酵素を発現させるプラスミド遺伝子として、肝臓特異的プロモーター(アルブミンプロモーター)で制御されたCre酵素発現プラスミド遺伝子を構築した。これらのプラスミド遺伝子の動作確認を、汎用株化細胞(CHO細胞、NIH3T3細胞)とヒト肝臓細胞(HepG2細胞)を用いて行ったところ、いずれも良好な動作を確認した。 2.遺伝子導入試薬と導入条件の検討 遺伝子導入に使用する試薬として多糖類を用いた担体を開発し、当該担体を用いた生体組織への遺伝子導入の可能性について基礎検討を行った。また、市販の遺伝子導入試薬(in vivoについては記載がないものを含む)による基礎検討も行った。その結果、多糖類由来の担体を含めたいくつかの試薬において、生体内遺伝子導入が達成されることがわかった。 次年度(平成23年度)は、本年度の成果を踏まえ、特に、マウス肝臓での効率的な遺伝子発現系の構築を目指す。
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