本研究では、犬バベシア症の原因であるBabesia gibsoniに対してアトバコン(ATV)をより効果的に使用するためのエビデンスを確立することを目的として、申請者がこれまでに確立した野生型およびATV耐性培養株を用いて(1) ATV標的部位と推測されるミトコンドリア機能の解析、(2)分子生物学的解析、(3)多剤に対する薬剤感受性、(4) ATVおよび併用薬剤の相互作用についての評価を行い、これらの結果をもとに(5) ATVおよびproguanil製剤(Malarone(R))の急性期B. gibsoni感染症に対する治療効果の評価を行った。その結果、原虫ATV耐性発現はミトコンドリアCYTb遺伝子における一塩基多形121Iの関与によるものであることが強く疑われ、さらにこの多型を有する原虫はATV以外の薬剤に対して交差耐性を示さないことが明らかとなった。またATVおよび他剤との併用は原虫増殖に対して相乗~相加作用を示し、Malarone(R)は急性期B. gibsoni感染動物に対して高い治療効果を示すことが明らかとなった。
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