近年、入浴施設の浴槽水を感染源とするレジオネラ感染が発生し、公衆衛生上問題となっている。レジオネラは、生存しているが人工培地で培養できない状態(VNC : viable but non-culturable)になる細菌であること、また、宿主アメーバ内で増殖するが人工培地では検出することができない菌種が存在することが報告されている。そのため、レジオネラ防止対策を講じるためには、培養法で検出可能なレジオネラだけでなく、これら培養不能レジオネラの棲息状況も把握しておく必要があるが、培養不能レジオネラを含めた分布実態は十分に明らかになっていない。本研究では、レジオネラがアメーバ内で増殖することを利用したアメーバ共培養法を検討し、培養不能レジオネラを含めた浴槽水汚染実態の解明を試みた。アメーバ共培養法について最適増殖条件の確立を行った結果、アメーバ用液体培地中で10^2~10^4cfu/mlのLegionella pneumophila(ATCC33152)とAcanthamoeba castelanii(ATCC30234)10^5cell/mlを30℃で7日間共培養することにより、レジオネラが約10^5倍に増殖することを確認した。浴槽水試料に適用するためには、レジオネラ以外の微生物類を抑制するための抗生物質の添加が必要であることから、アメーバ用培地に抗生物質を加えレジオネラ増殖への影響を検討した結果、抗生物質を添加しない条件時と同様にレジオネラが増殖することが確認された。これらの結果をふまえ、増殖条件を確立したアメーバ共培養法を用いて、入浴施設から採取した浴槽水試料とアメーバとの共培養を行った。共培養後の試料は、通常の培養法、PCR法及びリアルタイムPCR法によりレジオネラ検出を行っている。
|