レジオネラ防止対策を行うためには、培養法で検出可能なレジオネラだけでなく、VNC状態や培養不能菌種を含めた培養不能レジオネラの棲息状況も把握しておく必要があるが、これらレジオネラを含めた分布実態は十分に明らかになっていない。レジオネラがアメーバ内で増殖することを利用したアメーバ共培養法を検討し、昨年度までに確立した増殖条件を用いて、培養不能レジオネラを含めた浴槽水汚染実態の解明を試みた。入浴施設から採取した浴槽水71試料について、アメーバ共培養法を行った後、培養法、PCR法及びリアルタイムPCR法によりレジオネラ検出を行った結果、65試料(91.5%)からレジオネラを検出した。一方、通常の培養法により浴槽水からレジオネラを検出した結果、12試料(16.9%)が陽性であった。レジオネラ症の最も多い原因菌種であるL.pneumophilaが病原性を発揮するうえで重要な性質は、アメーバ内での増殖能と考えられている。そのため、アメーバ内増殖能を有するレジオネラはより強い病原性を有する可能性があり、レジオネラ症の発症につながる危険性も高い。アメーバ共培養法において、レジオネラがアメーバ内で増殖したことを確認するために、浴槽水試料と、アメーバ共培養後の浴槽水試料について、リアルタイムPCR法により定量的にレジオネラを検出した結果、得られた定量値の比較によりレジオネラのアメーバ内増殖が確認された。 本研究により、通常の培養法では検出できないが、生存しているレジオネラが浴槽水中に高率で生息することが明らかとなった。これらレジオネラはアメーバ内増殖能を有していることから、病原性を有するレジオネラの浴槽水汚染が示唆された。
|