白血病治療において最も重要な標的である白血病幹細胞は、正常造血幹細胞と表現形および機能的に極めて類似しつつも微妙に異なる性質を持つことが明らかとなってきた。一方、白血病幹細胞は、正常造血幹細胞と同様に特殊な骨髄内微小環境(ニッチ)による制御を受けて自己複製、生存をしていると考えられるが、その実体は十分明らかではない。そこで本研究では、成体骨髄での造血幹細胞の維持に必須のCXCL12-CXCR4ケモカインシグナルに注目し、骨髄微小環境における白血病幹細胞の発生、維持における役割を、CXCR4遺伝子欠損マウス白血病モデルを用いて検討し、さらに白血病幹細胞の骨髄微小環境における細胞動態を組織学的に解析することで、骨髄微小環境による白血病幹細胞制御システムを明らかにすることを目的とする。そこで、まず造血幹細胞および造血幹細胞ニッチの研究が進んでいるマウスを用いて白血病のモデルを作成した。さらにフローサイトメーターを用いた白血病細胞および正常造血細胞の詳細な表面抗原解析や組織学的解析を行い、白血病におけるニッチの役割を検討した。さらにマウスにおけるCXCR4遺伝子の欠損誘導について条件検討を行い、白血病におけるCXCRの役割の解析を進めた。また、白血病マウスモデルにおいて、緑色の蛍光蛋白やオレンジ色の蛍光蛋白を用いて白血病細胞を可視化した。さらに、白血病幹細胞の骨髄組織での同定のための条件検討を行い、白血病幹細胞ニッチの組織学的解析を進めた。
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