本年度は、治療抵抗性転移性肝腫瘍を想定し、家兎肝VX2腫瘍モデルにイリノテカン(CPT11)溶出性高吸水性ポリマー(CPT11-DESAP)を使用しin vivoで検討を行った。DESAPの調整はSAP3mg/CPT11:12mg/0.6mL/1羽とし、DESAPによるTAE施行群(DESAP群、n=5)、同量CPT11溶液注入後SAPによるTAE施行群(TAI+SAP群、n=5)を比較検討した。 薬剤注入後5、10、30、60分、24時間、7日における血液中CPT11平均濃度(ng/mL)は、DESAP群:1582、1584、1978、2046、11、0.2、TAI+SAP群:2468、2412、2432、2752、8、0.1、同血液中SN38平均濃度(ng/ml)は、DESAP群:24、21、18、13、0.7、0、TAI+SAP群:64、52、31、21、0.2、0であった。 腫瘍内、腫瘍辺縁部及び周囲肝の平均CPT11濃度(μg/g)は、DESAP群: 0.04、0.01、0、 TAI+SAP群:0、0、0、平均SN38濃度(μg/g)は、DESAP群: 0.60、0.09、0.02、 TAI+SAP群:0.08、0、0、平均CPT11濃度(μg/g)は、DESAP群: 0.04、0.01、0、 TAI+SAP群:0、0、0であった。 血液中CPT11およびSN38濃度ともDESAP群がTAI+SAP群よりも低い傾向を示し、また腫瘍内でDESAP群は高濃度を示した。特にCPT11よりもその代謝物で抗腫瘍効果の強いSN38の濃度が腫瘍内で高かった。以上より、CPT11-DESAPの組織内での薬剤徐放効果が示唆され、抗腫瘍効果の強いSN38の腫瘍内での貯留も示された。今後DESAPの臨床応用は可能と思われ、腫瘍局所制御の向上が期待される。
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