研究概要 |
神経障害性疼痛モデルにおけるβ2アドレナリン受容体の機能解析を行った。 SDラットのL5坐骨神経を結紮し、神経障害性疼痛モデル(SNL ; Spinal Nerve Ligation)を作成した。処置後3,7日目で一次知覚神経を摘出し、免疫組織化学によりβ2アドレナリン受容体の発現を解析した。.その結果、未処置群では主に一次知覚神経の小型神経細胞に発現していたβ2アドレナリン受容体が、神経損傷によって一次知覚神経の大型神経細胞での発現が増加することが示された。また、β2アドレナリン受容体遮断薬を神経障害性疼痛モデルラットの一次知覚神経周囲に1-100(ug/kg/day)の濃度で浸透圧ポンプを用い持続的に投与して、行動解析を行ったところ、低濃度(1ug/kg/day)のβ2アドレナリン受容体遮断薬投与により熱刺激、機械刺激ともに痛覚閾値が抑制される傾向にあったが、高濃度(100ug/kg/day)では熱刺激、機械刺激ともに痛覚閾値が抑制されないことが分かった。これらの結果から、神経損傷により誘導されるβ2アドレナリン受容体が神経障害性疼痛の成立に関与する可能性、β2アドレナリン受容体遮断薬が神経障害性疼痛における痛覚閾値を抑制する可能性が示唆された。以上の結果を踏まえ、今後より低濃度のβ2アドレナリン受容体遮断薬の痛覚過敏抑制効果を検討するとともに、ERK1/2, P2X2, P2X3を調査することによりその細胞内シグナリングを調査する。また免疫組織化学的に発現の増加が認められるβ2アドレナリン受容体のmRNAやタンパク質の経時的変化をReal-Time(RT)-PCR法やELISA法により調査する予定である。
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