本研究の目的は、口腔扁平上皮癌転移モデルに対する温熱療法(HT)と樹状細胞(DC)を用いた新規な併用療法の可能性を探求し、この療法の条件を最適化することである。 SCCVIIというマウスの扁平上皮癌細胞は、抗原性が極めて低い。そのため、この腫瘍を43°Cで加温するだけでは樹状細胞という強力な抗原提示細胞をあまり活性化できない。しかし、43°で加温したSCCVIIと、その後補充した樹状細胞にマイルドな41°C程度の加温を追加することで、樹状細胞は強く活性化され、また細胞障害性T細胞(CTL)は優位に腫瘍に浸潤していた。さらに、マウス転移モデルにおいて局所治療を行うことで腫瘍特異的な免疫が誘導され転移巣の抗腫瘍効果を認めた。このことから、腫瘍に対する加温(43℃)、樹状細胞の注入、腫瘍と樹状細胞に対するマイルドな加温(41℃)という3つのステップが腫瘍特異的な免疫を誘導でき、副作用のほとんどない新しい癌の治療法になりうると考えられる。
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