研究課題/領域番号 |
22792133
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
石田 陽子 山形大学, 医学部, 講師 (60322335)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 浸軟 / 皮膚 / スキンケア / 看護学 |
研究概要 |
絆創膏は臨床上様々な場面で使用され,絆創膏貼付によって浸軟などの皮膚傷害を引き起こすことが知られている.本研究では,実験動物(ウサギ)の皮膚に絆創膏貼付を施し,その影響について組織学的に明らかにすることを目的とした. 本研究では,皮膚水分率の測定面の確保,肉眼的観察が可能な日本白色種雄性ウサギを実験に供した.ウサギの背部を除毛後絆創膏を3日間貼付し,絆創膏除去直後1日目,2日目,4日目の状態を作製した.絆創膏貼付部の皮膚水分率はモイスチャーチェッカーを用いて測定した.併せて,肉眼的観察と写真撮影を経日的に行った.また,ウサギより絆創膏除去直後,1日目,2日目,4日目の皮膚組織を摘出し,常法に従いパラフィン切片を作製後,ヘマトキシリン&エオジン染色を施し,光学顕微鏡にて観察した. 皮膚水分率について,絆創膏貼付部では,除去直後に皮膚水分率は増加し,その後は対照部とほぼ同じ値で推移した.肉眼的観察では,除去直後にのみ光沢と発赤を認め,その後は対照部との違いを認めなかった.組織学的観察では,表皮や真皮浅層において,角質層の重層化や炎症性細胞と思われる細胞の出現,浮腫を認めた. 本研究で作製したウサギ皮膚の絆創膏貼付状態について,除去直後のみ皮膚水分率は増加し,肉眼的観察では光沢や発赤を認めた.また,組織学的観察においては除去直後以降も角質層の重層化や炎症を認め,皮膚傷害の前駆症状をきたしていることが明らかになった.以上より,肉眼的変化が認められない場合でも,組織学的には浸軟状態を呈し,摩擦やずれに対して脆弱で,スキンケアの観点から見過ごしてはならない状態であると考えられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
皮膚の浸軟に関する評価実験系(病態動物モデル)の応用について検討し,評価系が確立しつつある.今後は,マウス皮膚,ウサギ皮膚両モデルに,栄養不良状態や加齢,ステロイド使用など,臨床上想定される条件を加味し,皮膚の浸軟と褥瘡発生の関連の機序を検討する.
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今後の研究の推進方策 |
マウスおよびウサギにおける皮膚の浸軟に関する評価実験系(病態動物モデル)を用い,皮膚の浸軟と褥瘡発生の関連のメカニズムを明らかにする.その際,栄養不良状態や加齢,ステロイド使用など,臨床上想定される条件を加味し,今後検討する予定である. また,同実験系を用い,皮膚の浸軟に対する新たな看護ケア技術を開発するための基礎データを得る.
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