本研究は、外傷性高次脳機能障害者とその家族が経験した性格の変化や感情のコントロールの困難さから生じた家族の生活の変化の様相を明らかにすることを目的とした。具体的には、半構成的個別面接法において、患者の性格の変化および感情のコントロール困難な状況、そのような状況の時の患者の行動などについて、質的記述的研究デザインを用いて分析することであった。コントロール困難な時期には、何とか生活を続けながら、専門家への対応を願望しながらも方策が見つからず、自分達で対応を試みていた。 その結果、対応を学び、納得したり、自信を得ていた。また、患者の症状が落ち着いたり、治療法が見つかることで、それまでどう対応していいか分からず生活していたのが生活を立て直すことができたと感じていた。家族が体験した患者の様子としては、誰彼構わず話をする、怒りを家族にぶつける、同じことを繰り返すなどであり、家族は、その時の状況を『戦い』と表現したり『耐えられない』と感じていた。対応を学ぶきっかけとしては、患者会につながることができたことや新聞や書籍などで似た状況について紹介されている記事を見つけたことなどであった。受傷後早期に具体的な対処法がわかっていれば、あるいは、相談できる場所があれば、状況が変わっていた可能性があり、受傷後早期からの関わりの必要性が考えられた。本研究の研究に先立ち、研究代表者所属の倫理委員会に研究計画書を提出し承認を受けた。
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