今年度の目的は、外傷性高次脳機能障害者を介護している主介護者の聞き取りを行い、受傷直後から在宅ケアを行っている現在に至るまで、どのような経験をしてきたのか、家族側はどのような支援を医療者から受けてきたのか、その結果、見通しをどのように立てて過ごしているかを検討することだった。 これまでに3名の家族を対象に延べ5回にわたって聞き取りを行い、分析した。主介護者は、受傷直後は入院施設の医師や看護師、在宅移行期には、理学療法士や作業療法士などセラピストから受けた支援について語った。また、受傷後に脳損傷後の後遺症について説明を聞き、自分(家族)がどのような関わりをすればいいのか、早期に自覚した場合と、後遺症について説明を聞いていないため、どのような関わりをすればいいのかわからず困惑した場合があった。後遺症について説明を聞き、急性期からケアに参加した主介護者は、医療者から支援をしてもらっていると感じ、自分が行えることを見出し、在宅での介護に向けて気持ちを立て直していた。一方、後遺症について説明を聞いていないと話した主介護者は、なぜ自分の家族だけが・・・という思いを持ち続け、受傷後の人格の変化に戸惑い、障害に関するネーミングを獲得するまで「暗い毎日」を過ごしていた。さらに、医療者から紹介された患者家族会に参加することで、自分と同じ立場にある「少し先行く経験者」の姿を見て、近い将来自分もこんな風になれるという心の準備や覚悟ができていた。 これらの結果から、受傷直後からの医療者の支援は、主介護者の気持ちや生活の立て直しにおいて在宅介護を開始した後も影響を及ぼしていることが考えられた。この研究の成果の一部は、世界脳神経看護学会(2013.9)で発表する予定である。
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