研究課題
本研究では、近年著しい成長を遂げているドラックデリバリーシステム(DDS)の中にあって、Silicon Chemistryを鍵反応とすることで、(1)これまでナノ製剤化が困難であった水溶性の薬剤を内包する新規ナノキャリアの創製、(2)細胞内の環境変化に伴って100%の薬物を叙放可能にする"クリックリリース"システムの構築、(3)新規ナノキャリアの血中滞留性の制御、(4)新規ナノDDS医薬の治療効果の確認を目的としている。平成23年度は特に上記の(3)および(4)を実施した。具体的には、水溶性薬剤であるジェムザールをsicl_4とPEGを原料としたDDSキャリアを調整し、in vitroにおけるキャリアの安定性ならびに細胞毒性試験について検討した。その結果、A549に対する細胞毒性試験ではコントロール(ジェムザール単独)に比べ約50倍有意であるIC_<50>値を示した。また、Cy5ラベル化したキャリアの蛍光強度から、24時間後に10%のキャリアが血液中で残存していることが確認された。平成22年度から本年度までの検討で、本研究で新たに調整されたDDS医薬は親水性の薬剤を内包し、かつpHの変化に応じたクリックリリースが可能であること、ならびに優れた血中安定性と腫瘍細胞への増殖抑制効果を示すことが確認された。これらの成果は疎水性の薬剤を中心に研究されてきたDDSの化学へ"親水性薬剤のデリバリー"という可能性をもたらすものであり、今後のさらなる発展が期待される。
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Gene Therapy
巻: 19 ページ: 61-69
DOI:10.1038/gt.2011.74