本研究課題にてHaemaphysalis longicornisより単離した分子(HlOr)は7回膜貫通型構造を保持する可能性が示唆され、昆虫で既に単離されている嗅覚レセプターに相同性を示した。HlOrの遺伝子発現組織をRT-PCRにて解析した結果、ハラー氏器官がある第1脚において発現が確認されたが、第2~ 4脚では検出されなかった。また、鋏角、中腸および唾液腺においても発現が確認されたため、嗅覚レセプター以外の機能も持つ可能性も示唆された。さらに免疫組織蛍光抗体法によるHlOrのマダニ体内における局在の特定では、ハラー氏器官において陽性反応が検出された。次に新規嗅覚関連遺伝子の同定を行うため、ハラー氏器官をターゲットとした次世代シーケンス解析を実施した結果、いくつかの候補遺伝子の断片が確認された。これまでマダニでは嗅覚レセプターはほとんど報告されていないことから、本研究成果はマダニ宿主探知プロセスの解明に向けた有力な成果であるといえる。
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