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2022 年度 実績報告書

海底出土複合遺物の保存・展示・活用に関する総合的研究

研究課題

研究課題/領域番号 22H00023
研究機関奈良大学

研究代表者

今津 節生  奈良大学, その他部局等, 学長 (50250379)

研究分担者 池田 栄史  國學院大學, 研究開発推進機構, 教授 (40150627)
伊藤 幸司  東北芸術工科大学, 文化財保存修復研究センター, 教授 (50344354)
木村 淳  東海大学, 人文学部, 准教授 (80758003)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2026-03-31
キーワードトレハロース / モンゴル帝国 / X線CT / 元寇
研究実績の概要

モンゴル軍の日本侵攻の終焉の地である鷹島海底遺跡から発見された沈没船の部材など木材と金属から構成される複合遺物を対象として 、海底出土遺物の保存および展示・活用に関する国際的な課題解決を目指して研究を進めている。
先ず、第1に、保存方法の開発としてトレハロースを用いた保存方法の開発を進めている。トレハロースは耐湿性能や酸化防止 性能に優れている。そこで、国際的に顕在化している海底出土遺物の保存における深刻な問題を解決するために、トレハロースを用いた保存方法の開発と国際的な共同研究を進めている。
第2に、展示・活用方法の開発として、錆と泥で覆われた海底出土遺物の形状や構造を解明するために、X線CTによる三次元画像解析と3Dプリンタによるデジタル複製 品を用いて市民に分かり易く展示する方法を探った。モンゴル軍(モンゴル・南宋・高麗)が使った武器の用途を研究するために、X線CTの三次元画像解析で得たデジタル情報を用いて国際共同研究を行い「元寇」の実像にせまる研究を進めている。
第3に、国際共同研究として、モンゴル国立文化遺産センターとモンゴル文化庁から研究者を招へいして、X線CT画像と実物を観察しながら現地で武器の使用方法等を協議した。また、海底出土の金属と木材の複合遺物の実例として、和歌山県串本沖に沈んだトルコ軍艦エルトゥールル号出土遺物について、トルコの調査団が引き上げた金属と木材の複合遺物の保存処理について、串本に滞在中のエルトゥールル号調査団長Tufan Turanli博士や串本町教育委員会とも協議しながら、トルコ軍艦エルトゥールル号から発見された武器等の金属と木材の複合遺物の状態調査と保存処理を実施することで合意した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

第1に保存方法の開発、第2に展示・活用の開発、第3に国際共同研究による武器の用途解明等を進めた。
第1の保存方法の開発として、本年度は、長崎県松浦市の鷹島海底遺跡、および和歌山県串本町のエルトゥールル号出土遺物について、過去に行った保存処理遺物の実態調査を行った。また、ドイツのマインツで開催された国際博物館会議水浸考古遺物保存会議(ICOM-CC WOAM)で研究発表を行った。
第2の展示・活用の開発は、錆と泥で覆われた海底出土遺物の形状や構造を分かり易く展示すること、国内では発見例の少ないモンゴル軍(モンゴル・南宋・高麗)が使った武器の用途を国際共同研究によって解明することである。錆と泥で覆われた形状不明の遺物から遺物本来の形状を把握すると共に遺物の構造や製作技術を把握するには、X線CTによる非破壊構造調査、3Dプリンタによるデジタル複製による造形把握、三次元デジタル情報のアーカイブが有効である。本年度は、これまでに3D計測したデータを順次解析した。
第3の国際共同研究による武器の用途解明について、沈没船の船内から発見される遺物はモンゴルをはじめ中国・朝鮮半島で使用される武器や兵士達の生活用具である。日本側で保存処理を終えてX線CT調査を行い、三次元デジタル情報を取得した遺物の研究を行うには、モンゴル帝国の構成員であるモンゴル・中国・韓国などの研究者との交流は不可欠である。そこでモンゴル国立文化遺産センターとモンゴル文化庁から研究者を招へいして、X線CT画像を観察しながら現地で遺物を観察しながら武器の使用方法等を協議した。また、ちょうど、トルコから和歌山県串本町に発掘調査で滞在中であったエルトゥールル号調査団長Tufan Turanli博士と研究協議してエルトゥールル号から発見されて金属と木材の複合遺物の状態調査と保存処理を実施することで合意した。

今後の研究の推進方策

モンゴル軍の日本侵攻の終焉の地である鷹島海底遺跡から発見された沈没船の部材など木材と金属から構成される複合遺物を対象として 、海底出土遺物の保存および展示・活用に関する国際的な課題解決を目指して研究を進めている。
先ず、トレハロースを用いた保存方法の開発を進める。トレハロースは耐湿性能や酸化防止 性能に優れている。そこで、国際的に顕在化している海底出土遺物の保存における深刻な問題を解決するために、トレハロースを用いた保存方法の開発と国際的な共同研究を進める。トレハロースの耐湿性能や酸化防止性能に着目して、海外からも共同研究の依頼が来ている。UNESCOが主催する水中文化遺産セミナーをカンボジア国シュムリアップで開催する予定である。ASEAN諸国10カ国の研究者に、トレハロースを用いた保存法の効果を紹介すると共に、各国研究機関との情報交換や共同研究を開始したい。
次に、錆と泥で覆われた海底出土遺物の形状や構造を解明するために、X線CTによる三次元画像解析と3Dプリンタによるデジタル複製 品を用いて市民に分かり易く展示する方法を探る。モンゴル軍(モンゴル・南宋・高麗)が使った武器の用途を研究するために、X線CTの三次元画像解析で得たデジタル情報を用いて国際共同研究を行い「元寇」の実像にせまる予定である。
さらに、海底出土の金属と木材の複合遺物の実例として、鷹島海底沖出土遺物の調査研究に加えて、和歌山県串本沖に沈んだトルコ軍艦エルトゥールル号出土遺物について、トルコの調査団が引き上げた金属と木材の複合遺物について、X線CTによる三次元画像解析を実施すると共に遺物の状態調査と保存処理を実施する予定である。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Conservation treatment of Mongolian ships using the trehalose method2023

    • 著者名/発表者名
      Kouji Ito1,Yumi Yasuki, Toshiya Matsui, Akiko Miyake, Setsuo Imazu
    • 雑誌名

      ICOM-CC Wet Organic Archaeological Materials Working Group Change of venue for the 15th WOAM Interim Meeting

      巻: 1 ページ: 1-10

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 奈良で学ぶ 橿原考古学研究所長&奈良大学学長対談2022

    • 著者名/発表者名
      青柳規、今津節生
    • 雑誌名

      月刊ならら

      巻: 290 ページ: 4-16

  • [雑誌論文] X線CTスキャナを用いた螺鈿紫檀五絃琵琶の健康診断と構造解析2022

    • 著者名/発表者名
      今津節生
    • 雑誌名

      正倉院宝物の研究 螺鈿紫檀五絃琵琶

      巻: 1 ページ: 68-85

  • [雑誌論文] 保存科学を学ぶ人に実践して欲しい三つの習慣2022

    • 著者名/発表者名
      今津節生
    • 雑誌名

      文化財保存修復学会『通信』

      巻: 175 ページ: 1-6

  • [学会発表] モンゴル国・突厥時代ザーマル古墳出土木製遺物の彩色顔料に関する調査2022

    • 著者名/発表者名
      柳成煜、今津節生、成瀬正和、デ・ウランチメグ、オユントルガ・メンドバザル
    • 学会等名
      日本文化財科学会第39回大会
  • [学会発表] モンゴル帝国と日本の戦いが終わった場所 鷹島海底遺跡の発掘と保存2022

    • 著者名/発表者名
      今津節生
    • 学会等名
      モンゴル国立文化遺産センター
    • 招待講演
  • [学会発表] 3Dプリンターを用いた脱活乾漆像の塑土原型の再現2022

    • 著者名/発表者名
      今津節生、山崎隆之、清水宏至、加藤沙弥
    • 学会等名
      文化財保存修復学会

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公開日: 2024-12-25  

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