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2023 年度 実績報告書

PW級フェムト秒レーザーによる超高温非平衡固体密度重元素プラズマの形成過程の解明

研究課題

研究課題/領域番号 22H00121
研究機関国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構

研究代表者

西内 満美子  国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 関西光量子科学研究所 光量子ビーム科学研究部, 上席研究員 (70391315)

研究分担者 千徳 靖彦  大阪大学, レーザー科学研究所, 教授 (10322653)
榊 泰直  国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 関西光量子科学研究所 量子応用光学研究部, 上席研究員 (00354746)
劉 暢  国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 関西光量子科学研究所 量子応用光学研究部, 研究員 (20894629)
今 亮  国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 関西光量子科学研究所 光量子ビーム科学研究部, 主任技術員 (80725838)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2027-03-31
キーワードレーザー駆動重イオン加速 / 超高強度短パルスレーザー / 高密度非平衡プラズマ / 重イオン / プラズマ加熱
研究実績の概要

本研究の目的は、既存技術に則った重イオン加速器では得られないパラメータを持つ可能性のある、レーザー駆動高重イオン型の新規加速器技術の確立を目指し、重元素を効率的に多価電離・加速する手法を確立するための条件を探索することである。効率の良い加速を行うためにはできるだけ初期段階にて重イオンを多価電離状態とすることが必要不可欠であるため、PW級フェムト秒パルスレーザーを固体薄膜に照射し、固体密度にできるだけ近い状態の重イオンプラズマを作り出すことで、高温プラズマ中での電子衝突過程にて多価電離した重イオンを作り出すことを試みる。
及びR5年度は、R4年度の後半に引き続き、関西研にある超高強度レーザーJ-KARENと金の薄膜を相互作用させ、固体の金を超高温に加熱する実験を行った。その際に、レーザーの照射角度、及びレーザーの偏光を変えた照射を行い、より効率的に金プラズマを加熱する条件が何であるかを実験的に明らかにすることに挑戦した。検出器としては、金のプラズマが~10keVのX線領域に連続成分及びライン成分を持つと期待できたので、その領域に感度のあるX線CCDを用いて計測を行った。X線のスペクトルには、Lシェルからのライン成分が計測できており、このライン中心がtargetの厚みを変えることではっきりと高エネルギー側にシフトすることが計測された。このシフトはターゲット中のプラズマのチャージステートを表すことが、アトミックコードGRASPより示唆されており、分厚いターゲットほど、平均チャージステートが上がっている様子が初めて明らかとなった。平均チャージステートが高いことは、プラズマがより高温まで加熱されていることを示唆している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

上記に記したように、固体金プラズマからのX線発光に計測されたラインの中心エネルギーは、照射した金のターゲットの厚みと非常にクリアな相関を持っており、時間的・空間的に複雑な構造を持つと期待される非平衡プラズマから、これほどはっきりとした相関がみられるとは期待していなかったため、このようなデータを取得できたことは特筆に値する。現状の理解では、
1)分厚いターゲットほど高エネルギーにライン中心がシフトしている
2)分厚いターゲットほど平均チャージステートが増加している
3)超高強度レーザーによるオーム加熱を仮定するとターゲットは~6keV程度の温度を持つと計算できる。
4)アトミックコードより、そのシフト量より計算される平均チャージステートは+64価であり、6keVの電子プラズマ温度中の電子であれば、+64価まで電離することが可能
とX線の計測結果とシンプルな解析的なプラズマの加熱モデルの描像が一致している。

今後の研究の推進方策

計測結果を
1)実際のレーザーの計測パラメータを入れ込んだPICシミュレーションで実験結果(加速されたイオン、電子、相互作用の後のレーザーの量等)を再現することができるか否かを調査する。
2)実験結果を再現するPICシミュレーションの中身を詳細に調査することで、金プラズマの加熱のメカニズムが、上記(現在までの進捗状況)に説明した加熱の描像と一致するかどうかを確かめる。
3)X線の計測結果自体は、時間的空間的に積分した値なので、時間的、空間的にプラズマがどのように成長するかをモデル化し、PICシミュレーション結果と合わせることで、X線の計測結果を再現できるかどうかを確かめる。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2024 2023 その他

すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件、 招待講演 4件)

  • [国際共同研究] Helmholtz Zentrum Dresden Rosserdorf(ドイツ)

    • 国名
      ドイツ
    • 外国機関名
      Helmholtz Zentrum Dresden Rosserdorf
  • [国際共同研究] Imperial College London(英国)

    • 国名
      英国
    • 外国機関名
      Imperial College London
  • [雑誌論文] Laser Output Performance and Temporal Quality Enhancement at the J-KAREN-P Petawatt Laser Facility2023

    • 著者名/発表者名
      H. Kiriyama, Y. Miyasaka, A. Kon, M. Nishiuchi, et. al.
    • 雑誌名

      Photonics

      巻: 10 ページ: 997

    • DOI

      10.3390/photonics10090997

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Design of a compact superconducting accelerator for advanced heavy-ion therapy2023

    • 著者名/発表者名
      Y. Iwata, T. Shirai, K. Mizushima, .. M.Nishiuchi...et al
    • 雑誌名

      Nuclear Instruments and Methods in Physics Research Section A:

      巻: 1053 ページ: 168312

    • DOI

      10.1016/j.nima.2023.168312

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Prospect for the e nergetic highly charged heavy ion acceleration by a short pulse high contrast laser system2024

    • 著者名/発表者名
      M.Nishiuch et al
    • 学会等名
      レーザー学会第44回年次大会
    • 招待講演
  • [学会発表] 次世代加速器を目指したレーザープラズマイオン加速研究2023

    • 著者名/発表者名
      西内満美子
    • 学会等名
      第10回光科学異分野横断萌芽研究会
    • 招待講演
  • [学会発表] Enhanced Ion Acceleration from Transparency-driven Foils Demonstrated at Two Ultra-intense Laser Facilities2023

    • 著者名/発表者名
      M. Nishiuchi
    • 学会等名
      Laser Applications Conference, OPTICA LASER CONGRESS
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Efficient acceleration of highly ionized heavy ions via ultra-relativistic high fields with PW laser systems2023

    • 著者名/発表者名
      M. Nishiuchi et al.,
    • 学会等名
      SPIE Optics Optolectronics 2023
    • 国際学会 / 招待講演

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公開日: 2024-12-25  

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