研究課題/領域番号 |
22H00122
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
大西 宏明 東北大学, 電子光理学研究センター, 教授 (60360517)
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研究分担者 |
GUBLER PHILIPP 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 先端基礎研究センター, 研究職 (00632390)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | カイラル対称性の自発的な敗れ / ベクトル中間子 / 高密度QCD |
研究実績の概要 |
ハドロンの質量の98%は量子色力学(QCD)で記述される真空の持つ特徴「カイラル対称性の自発的な破れ(χSB)」により動的に獲得される.この現象の有力な検証方法が「ハドロンの質量がχSB が部分的に回復している原子核中で減少することの観測」である.これまで数多くの実験が試みられてきたが,これまで必ずしも成功しているとは言い難い.本研究は,クォーク凝縮の変化に敏感なベクトル中間子である! 中間子に焦点を絞り,質量と荷電半径間に反比例関係があることを使い,原子核中/真空中での! 中間子荷電半径の変化の有無を確定する事により,ハドロンの質量起源が真空が持つ特徴「カイラル対称性自発的破れ」であるか否かをこれまでとは異なる方向から検証することを目的としたものである. 当該研究年度は,前年度に引き継ぎ,主に実験現場であるSPring-8/LEPS2ビームラインのビーム強度の増強によるデータ収集効率の向上を目的とし,データ収集回路系(電磁カロリーメータからのアナログ信号をデジタル信号に変換するQDC回路,データ収集用のVME-CPU回路)の調整を続けていくとともに,未整備の高時間分解能時刻測定回路の調達,検出器群へのインストール,調整を行い,実験データ収集の基本的な準備を整えることができた.また昨年度より着手したデータ収集回路の高性能化を目指し,新しい回路の開発については,プロトタイプの製作を実施,成果を日本物理学会をはじめ,国内ワークショップで報告,議論を深めた. 一方,昨年度に引き続き分担者による各媒質中におけるベクトル中間子,当該年度はφ中間子の特性の変化等に関する研究が進展した.研究を継続的に進めていく.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究年度,電子回路の国際的な流通困難による,機器の調達の遅延を危惧していたが,ほぼ予定通り機器の調達ができた.また,その後のシステム整備,初期的な試験など,データ収集回システムに関する準備も順調に進み,データ収集の開始を見込める準備が整った.一方,これまでの検出器システム調整の過程で,実験装置自体が建設から10年以上が経過したことによる一部経年劣化が確認され,手を加える必要が出てくる可能性があることが懸念事項として挙げられる.注意深く検出器群の状態を見極めていく.新しい電子回路の製作についてもテスト基板の作成,初期的な試験が完了した.今後試作機の制作に向け準備を進めることができた. 昨年に引き続き,ベクトル中間子の原子核内での特性変化に関する理論的な理解が進んでいる.当該研究の対象であるオメガ中間子に関する物理を理解するためには,今後分担者とさらに議論を深めていく必要がある.
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今後の研究の推進方策 |
今後,実験装置からのデータ読み出しシステム整備に関する準備を完了させ,実験データ収集を開始する. 分担者はベクトル中間子が核媒質中でどのような質量変化を起こすのかに関する研究を継続推進し,その全容についての知見を深める.加えて,分担者,研究協力者,当該研究に関する専門的な知識を持つ研究者によるセミナーを開催するなどして,当該研究の対象であるオメガ中間子特有の現象についての考察する.同時に,本研究の中心課題であるハドロンの質量起源に関する研究会,国際会議において積極的に情報を発信し,今後の研究方針について確認する. 実験の開始後すぐにデータ解析を進められるようにコンピューター環境の整備を進めると主に,モンテカルロシミュレーションなど,解析に必要なソフトウエアーの準備を続けていく.
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