研究課題/領域番号 |
22H00389
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
中野 浩平 岐阜大学, 大学院連合農学研究科, 教授 (20303513)
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研究分担者 |
黒木 信一郎 神戸大学, 農学研究科, 准教授 (00420505)
福島 崇志 三重大学, 生物資源学研究科, 教授 (00452227)
今泉 鉄平 岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (30806352)
濱中 大介 鹿児島大学, 農水産獣医学域農学系, 准教授 (60399095)
蔦 瑞樹 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 食品研究部門, 上級研究員 (80425553)
タンマウォン マナスィカン 岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (90763673)
曽我 綾香 神奈川県農業技術センター, 生産環境部, 主任研究員 (60503638)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 鮮度 / 青果物 / メタボロミクス / 蛍光指紋 / 近赤外分光法 / ストレス応答 / 微生物叢 |
研究実績の概要 |
本課題では,青果物における鮮度を科学的に定義し,その定量化技術を開発した上で,鮮度制御技術へと展開することを目的とし,本年度は,流通過程で遭遇する各種ストレス因子に対応した鮮度マーカー代謝物をメタボロミクスによって明らかにした。昨年度までの研究成果によって,リーフレタスの鮮度マーカー候補として挙げられている遊離アミノ酸について,異なる品目の葉菜類野菜での適用可能性を検討した。貯蔵温度と日数の積である貯蔵積算温度を鮮度低下の参照値として解析したところ,コマツナやホウレンソウにおいても共通のアミノ酸が同定され,葉菜類野菜全般に通用する鮮度マーカー代謝物となることが示唆された。一方,カット野菜等で想定される切断ストレスを与えたピーマンやナガイモにおいては,葉菜類野菜とは異なる代謝物が同定された。また,UVあるいは超音波ストレスを与えたサクランボやバナナに対してトランスクリプトーム解析を行い,有意に変動する代謝経路を明らかにした。トマト果実においては,熟度の進展に伴い微生物叢が変動したが,照射された紫外線領域によってもその変動が異なることを認めた。振動ストレスに関し,トラック輸送における振動帯である50Hz-3G以下の条件で数種青果物を加振したところ,振動加速度や時間などの振動強度に加え,熟度や収穫後日数なども振動後品質に影響を及ぼすことが示された。 青果物鮮度の定量化技術開発に向け,ブロッコリーを対象に分光蛍光光度計を用いて,花蕾部先端,茎の側面,および収穫切断面の蛍光指紋を取得した。蛍光指紋を説明変数,貯蔵積算温度を目的変数としてLASSO回帰分析をしたところ,推定精度は収穫切断面が最も高くなった。また,各種環境ストレスに応答する鮮度マーカー代謝物群量の分布を可視化するために680ー1670nmの範囲における近赤外吸収を撮像すると同時に,呼吸速度を取得可能な計測系を構築できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
質量分析によるメタボロミクスによって,葉菜類野菜で共通して適用可能な鮮度マーカー代謝物を明らかにできたとともに,鮮度を科学的に定義する上で必要な老化過程における代謝変動の一端をトランスクリプトーム解析によって掴むことができた。また,温度ストレスのみならず,UVや超音波,振動とった各種ストレス環境下での代謝物や微生物叢の変動についても明確になりつつあり,青果物鮮度の科学的理解に向けた知見が着実に蓄積されてきている。鮮度の定量化技術の開発においては,リーフレタスに加えてブロッコリーについても蛍光指紋解析によって,貯蔵積算温度推定のための重要励起・蛍光波長や計測好適部位が明らかとなり,鮮度計測の実用化に向けた基盤理論が固まりつつある。鮮度マーカーのモニタリングによる鮮度制御技術の開発においては,昨年度の研究で同定された低温ストレスマーカーの非破壊計測に関する検討を継続しており,次年度での目的達成を目指す。
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今後の研究の推進方策 |
青果物鮮度を収穫後生理学の観点から理解するために,今後も引き続きメタボロミクスと遺伝子発現解析によって各種ストレス因子への応答メカニズムを明らかにする。そして,重要な代謝物や遺伝子を鮮度マーカーとして同定し,鮮度計測の標準化手法として提案する。青果物鮮度の計測技術の開発においては,デスクトップ型の蛍光分光光度計や近赤外分光光度計を継続して用いながら鮮度計測に必要な基盤データを蓄積するとともに,実用化技術とするため,近年,MEMS技術により開発された超小型分光センサーによる鮮度マーカー代謝物の計測の可能性についても検討する。青果物鮮度の制御技術の開発においては,バナナの低温ストレスマーカーの非破壊計測技術の開発を進め,生体モニタリングに基づく環境制御による低温障害を抑制する貯蔵技術の基盤理論を得るところまで研究を進める。
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