研究課題/領域番号 |
22H00438
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
青木 淳賢 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 教授 (20250219)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | リゾリン脂質 / GPCR / 感染症 / がん免疫 |
研究実績の概要 |
研究代表者は、生体膜リン脂質から産生されるリゾホスファチジン酸(LPA)、リゾホスファチジルセリン(LysoPS)、リゾホスファチジルグルコース(LPGlc)に関し、受容体・産生酵素同定、検出手法・受容体作動薬・拮抗薬・酵素阻害剤等の開発を通じ、その生理・病態機能の解明を進めてきた。この研究過程で、リゾリン脂質受容体が免疫反応を正または負に調節することを見出した。本研究では、抗原免疫したマウスのリンパ節をモデルとして、LPA、LysoPS、LPGlcが免疫細胞に発現する受容体を介し、どのように免疫応答を制御するか、その産生酵素も含め全容解明を目指す。さらに、受容体作動薬・拮抗薬を創薬応用し、免疫制御機能を持つ新たな抗がん剤・抗感染症薬・自己免疫抑制剤を提案する。令和5年度は肺炎球菌感染症をモデルとして、感染症免疫におけるPS-PLA1-LysoPS軸の機能解明を試み、以下の結果を得た。 1. リポテイコ酸の経鼻投与により、肺胞内にPS-PLA1が誘導されLysoPS量が顕著に増加する。2. PS-PLA1 KOマウスでは細菌クリアランス能が顕著に低下する。 3. PS-PLA1 KOマウスでは炎症時におけるサイトカイン発現が減弱し、浸潤する好中球の数が減少する。4. LPS1 KOマウスはPS-PLA1 KOマウスと同様の表現型を示す。5. LPS1は肺に常在するマクロファージに高発現する 本研究においては、細菌感染時に誘導されるPS-PLA1はLysoPSを産生し、LysoPSが肺に常在するマクロファージ上のLPS1に作用することで、サイトカイン産生とそれに続く好中球浸潤の増強へとつながり、結果として感染に対して防御的に機能する可能性を明らかにした。以上の結果を踏まえるとLPS1は感染症の新規創薬標的となりえる。今後はLPS1作動薬の抗感染症薬としての可能性を追求する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度、感染症モデルをLysoPS受容体LPS1, LysoPS産生酵素PS-PLA1のKOマウスに適応し、PS-PLA1-LysoPS-LPS1軸が抗感染症作用を持つことを明らかにすることができた。この結果は、LPS1作動薬の高感染症薬としての可能性を示唆するものであり、本研究の目的の一部が達成された。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度までに、LysoPSが抗がん作用、抗感染症作用を持つという新規LysoPSの機能が提唱された。今後速やかに論文化する必要がある。また、LPI受容体GPR55が制御性T細胞に発現し、がん形成に対し促進的に機能する可能性を見出しており、今後、LPI拮抗薬の開発を含め検討する。
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