研究課題/領域番号 |
22H00449
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
本庶 佑 京都大学, 医学研究科, 特任教授 (80090504)
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研究分担者 |
小林 牧 京都大学, 医学研究科, 特定准教授 (20400690)
Begum NasimAra 京都大学, 医学研究科, 特定准教授 (80362507)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | hnRNP K / hnRNP U / R-ループ |
研究実績の概要 |
DNA切断に関わるMed12とhnRNP Kについて、それぞれ以下のような新たな成果を得ることができた。Med12/eRNAによるIgH遺伝子座の長大なループ構造複合体の解析のため、IgH遺伝子の3'エンハンサーから転写されるeRNAの転写開始点と終結点を同定した。hnRNP Kのノックダウンレスキューのため、内因性hnRNP Kの発現がより少なく、またIgH遺伝子の短時間での組換え効率の良い新たなhnRNP K欠損細胞株を樹立した。また、野生型や変異型のhnRNP Kを用いてレスキュー効率などを確認した。 DNA修復に関わる因子群については、フィブリラーリンとMed19のドメイン特異的な相互作用因子を単離するため、抗体遺伝子組換えをサポートする能力のない、モチーフ変異体やドメイン欠損変異体を作成し、それらの機能を検証した。 また、RNaseH1によるR-ループを介したDNA修復に関わる構成因子の解析を進めhnRNP Uの機能を明らかにした。具体的には、hnRNP Uが古典的非相同DNA組換え (cNHEJ)の各種因子をIgH遺伝子の修復部位に集めるために作用していること、また、hnRNP UはR-ループ構成複合体にも結合し、また、IgH遺伝子の転写部位に形成されるR-ループのうち、特にG4構造にhnRNP Uが結合していた。hnRNP Uは総合して、cNHEJ を順調に進めるために必要であり、かつ、R-ループが過剰に形成されるために引き起こされる行き過ぎたDNA切断とゲノム不安定性を避けるために作用すると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記のように、DNA切断と修復について、それぞれの分子で新たな発見を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
Med12とIgHのeRNAによる複合体形成の詳細を解明するために、IgH遺伝子の3'エンハンサーから転写されるeRNAに対するプローブを作成し、複合体をトラップすることにより、複合体構成因子の同定を進める。また、hnRNP Kについては、新たな欠損細胞株を用いて、SINE B1配列の分布や、IgH遺伝子との位置関係を解析する。 フィブリラーリンとMed19については、ドメインやモチーフの変異体と野生型を比較することにより、DNAシナプスや修復の複合体構成因子を同定するために、タグ付き分子によりトラップ実験を行い、回収したタンパク質やRNAを用いて、質量分析法や大規模シーケンス法により新たな責任候補分子を同定する。現在までに、有力な候補が2つ、得られているので、IgH遺伝子組換えにおけるそれらの機能を解析する。
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