研究課題/領域番号 |
22H00522
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研究機関 | 日本電信電話株式会社NTTコミュニケーション科学基礎研究所 |
研究代表者 |
谷 誠一郎 日本電信電話株式会社NTTコミュニケーション科学基礎研究所, メディア情報研究部, 特別研究員 (70396183)
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研究分担者 |
森前 智行 京都大学, 基礎物理学研究所, 准教授 (50708302)
森 立平 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 准教授 (60732857)
西村 治道 名古屋大学, 情報学研究科, 教授 (70433323)
七島 幹人 東京工業大学, 情報理工学院, 助教 (90855222)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 計算資源 / 量子計算 / 計算理論 / 量子計算複雑さ |
研究実績の概要 |
委託量子計算分野に関しては,量子状態の区別可能性と変換可能性の双対性を用いることにより、古典暗号では可能であることが未知の仮定のもとで,量子公開鍵暗号を構成した。また、基底状態に近い状態を入力として基底エネルギーを求める問題に対し、物理的に自然なハミルトニアンでもBQP完全やQMA完全になることを示し,さらに近似値や局所性の改善にも成功した。 分散量子計算分野では,ネットワーク上での量子非対話型証明(分散量子非対話型証明)に関し,先行研究では最終的な検証でのノード間量子通信を認めているが,証明部分の量子情報を増やすことにより,ノード間通信は古典で十分であることを証明した.また,集合等価性問題に対する分散量子非対話型証明プロトコルを提案し,量子優位性を明らかにした. 量子計算機単体分野では,古典計算では可能な「計算の巻き戻し」を量子計算に対して仮定すると,通常考えられているよりもはるかに大きい計算能力を発揮する状況証拠を得た.これは,測定が非可逆であるという量子力学の公理の合理性を,計算量理論的側面から支持するものである.また,応用的観点からは,無線通信における最適化問題を Groverのアルゴリズムで解く手法を提案し,必要な qubit数、ゲート数、反復回数を解析した。 量子情報処理の限界について理解を深めるため,暗号理論の最重要要素の1つである一方向性関数に対して,古典の設定における新しい3つの基本的特徴付け,(i)アルゴリズム的情報の平均時対称性による特徴付け,(ii)学習困難性に基づく特徴付け,及び,(iii)ある(自然な)約束問題の最悪時困難性による特徴づけを証明した.これは,安全な暗号の構成に本質的に必要となる計算困難性や情報の性質について従来の知見を強化する成果であり,将来的に暗号技術の安全性根拠の強化に繋がることが期待される.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各研究項目において,計画していた検討が順調に進んでいるため.
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今後の研究の推進方策 |
引き続き.量子計算の3つの主要分野(委託量子計算,分散量子計算,単体量子計算),及び,量子計算能力の限界に関する理解を深めるために必要な古典計算理論を柱として,組織的かつ横断的に研究を進めていく.このために,必要に応じてミーティングを実施するなどして,議論を深めていく.さらに,波及効果の大きい成果につなげるため,本課題の分担者以外の専門家とも必要に応じて交流・議論を行ない,隣接分野に対する理解を深める.
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