研究課題
本研究遂行のためには、平均年1回の生起確率以上の出水の前後にモニタリング調査をする必要があり、調査地として選定した淀川水系木津川・宇治川・賀茂川、天竜川、那賀川において、モニタリング用機材設置と事前調査をおこなったが、2022年度には、これらの河川で想定した規模の出水が起こらなかったため出水前後の生息場変化のモニタリング調査できなかった。このため、大規模出水後の生息場と生物群集の経時的変化に関する調査は次年度に延期し、既存の調査結果や今回の事前調査で取得できた生息場類型と底生動物種組成の対応関係について分析を進めることとした。宇治川では、比高の異なるたまり間で底生動物群集の組成を比較した結果、比高の高いたまりでは止水性生息場の生息種の多様性が高まること、ならびにたまりの形成維持に粘性土層(土丹)の存在が働いていることが示唆された。木津川では、たまりの形状に関する変異を分析した結果、伝統的河川工法である中聖牛の近傍に形成されたたまりは水深/面積比が大きく、水温変動の日較差が小さいことや、多くの水生動物の避難場として機能していることがわかった、さらに木津川の本流における生息場類型として、底質を構成する土砂移動の頻度や履歴と底生動物相との関係について分析するための試料を得た。これらの対応関係については、現在も分析中であるが、小さな出水でも容易に移動する粗砂成分が卓越する砂利底の生息場にはヒメヒラタカゲロウ属やクサカワゲラ属が多く、小出水では動きにくい石礫底の生息場にはアカマダラカゲロウやシマトビケラ科が多いことがわかった。今後、これらの関係が生じる時系列的な過程について調査と分析を継続する予定である。
2: おおむね順調に進展している
本研究遂行のためには、平均年1回の生起確率以上の出水の前後にモニタリング調査をする必要があり、調査地として選定した淀川水系木津川・宇治川・賀茂川、天竜川、那賀川において、モニタリング用機材設置と事前調査をおこなったが、2022年度には、これらの河川で想定した規模の出水が起こらなかったため出水前後の生息場変化のモニタリング調査できなかった。このため、大規模出水後の生息場と生物群集の経時的変化に関する調査は次年度に延期し、既存の調査結果や今回の事前調査で取得できた生息場類型と底生動物種組成の対応関係について分析を進めることとした。
木津川では、たまりの形状に関する変異を分析した結果、伝統的河川工法である中聖牛の近傍に形成されたたまりは水深/面積比が大きく、水温変動の日較差が小さいことや、多くの水生動物の避難場として機能していることがわかった。また、木津川の本流における生息場類型として、小さな出水でも容易に移動する粗砂成分が卓越する砂利底の生息場と、小出水では動きにくい石礫底の生息場とが重要であることが示唆された。移動しやすい河床の指標種としてヒメヒラタカゲロウ属やクサカワゲラ属、移動しにくい河床の指標種としてアカマダラカゲロウやシマトビケラ科が挙げられるが、今後、時系列的な過程も含めた調査を行い、それぞれの生息場に生息する種群の遺伝的特性に関する分析を進める予定である。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 7件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 7件) 学会発表 (9件) 図書 (1件)
Frontiers in Environmental Science
巻: 11 ページ: 1205561
10.3389/fenvs.2023.1205561
Frontiers in Cellular and Infection Microbiology
巻: 13 ページ: 1252656
10.3389/fcimb.2023.1252656
PLoS ONE
巻: 18(7) ページ: e0289056
10.1371/journal.pone.0289056
Science of the Total Environment
巻: 872 ページ: 162258
10.1016/j.scitotenv.2023.162258
巻: 9(3) ページ: e0298656
10.1371/journal.pone.0298656
DPRI Annuals
巻: 65B ページ: 334-342
巻: 817 ページ: 152992
10.1016/j.scitotenv.2022.152992