研究実績の概要 |
肥料や各種添加物から環境水中へ流出されるリン酸(水素)イオン、(亜)硫酸イオンや(亜)硝酸イオンなどのアニオンは、河川、湖沼、湾内などの閉鎖系水域における富栄養化等の主因となる環境汚染物質であり、国内だけでなく、農業国の東南アジアや国内でも大きな問題となっている。また、環境水の検出は、SDGsの#6(安全な水)にも大きく関与するため、地球規模で解決すべき大きな課題でもある。 本研究では、これらの水環境問題を解決するために、環境水中でのイオンを高感度で検知できる全固体型環境イオンセンサデバイスを構築することを最終目的としている。 当該年度は、まず、各環境イオンと大きな相互作用を示すレセプタ材料候補の探索、合成と評価を行った。レセプタ材料には、化学的安定性と電子導電性を有し、主に環境イオンとなる各種アニオンとの相互作用が期待される複合酸化物を検討した。酸化物には、従来の研究も踏まえ、電極触媒活性が期待される種々のペロブスカイト型酸化物(ABO3)、スピネル型酸化物(AB2O4)、 (A: La, Sm, Gd, B: Fe, Co. Ni, Cu)等を取り上げ、それらは主に高分子錯体前駆体法により作製した。これらの酸化物レセプタのキャラクタリゼーションは、XRD,XPS,SEM,TPD,TEM等により精密に行い、レセプタの構造・物性解析を行った。 センサ素子の精密成形法として、酸化物粉末から電気泳動析出法により厚膜電極を作製する手法をほぼ構築した。 センサ応答としては、まず各種レセプタ電極を用いて電気化学測定により各酸化物レセプタと環境イオンの相互作用を検討した。その結果、Sm-Cu-O系酸化物が亜硫酸イオンに、Cu-Co-O系酸化物が硫酸イオンに、大きな相互作用を示すことを初めて見出した。特に硝酸イオンは検知が難しく、これまでほとんど報告がないため、大きな収穫があったと言える。
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