研究課題/領域番号 |
22K00110
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研究機関 | 国士舘大学 |
研究代表者 |
菱刈 晃夫 国士舘大学, 文学部, 教授 (50338290)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | キケロー / 自然の光 / ローマの信徒への手紙 / 自然法 / 状態(質) / 習慣 / 素質 / 萌芽 |
研究実績の概要 |
メランヒトンにおける「自然の光」および「生得観念」は主にキケローから受容されている。そこで彼の自然法思想が形成されていくプロセスの一部をたどった。メランヒトンはキケローを日ごろ大学での講義の中で、どのように取り上げていたのか、年代順にピックアップしたうえで、メランヒトンにおけるキケローとの取り組みの概略を明らかにし、とくに彼が繰り返し取り組んだ著作『義務について』(De officiis)のスコリア(欄外注)から、彼のキケロー理解の詳細に分け入った。とりわけ第 1 巻 4 章のスコリアから、メランヒトンが人間の自然本性に元より備わる、さまざまな「徳の萌芽」を列挙した。これらは人間存在に最初から内在する、道徳の基礎となる根源(semen)である。すなわち正義、知恵、勇敢、自制といった、人類の自己保存と維持、さらに発展に必要不可欠な萌芽であり種であるが、こうした種そのものはすでに人間の本性に生まれつき蒔かれている、と見なすのがメランヒトンであることが判明する。換言すれば、これらこそが自然法の種子であり「生得観念」である。その後、こうした古典注解とあわせてメランヒトンが取り組んだ聖書注解から、とくに『ローマの信徒への手紙注解』を重ね合わせ、彼の「自然の光」説と自然法思想の特質を、さらに浮き彫りにした。また修辞学と弁証学について見た。これらは自然学や倫理学の学問的あるいは方法的フレームを形成しているジャンルであるが、この中に自然学や倫理学の内容も実例として豊富に含まれている。とくに弁証法に関するメランヒトンの主著 Erotemata Dialectices は1547年の初版以来、16世紀プロテスタント圏ドイツでは論理学における主要著作とされる。今回は、この『弁証法の問題』に注目し、そこでの「自然の光」に関係するテクストを抽出することで、人間の思考および学習の根本的な原理をメランヒトンがどのように捉えていたのかを浮き彫りにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
キケローや弁証法まではメランヒトンのテキストをたどることができたが、修辞学等までは本格的に探索の手をまだ伸ばしきれなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
1547年版『弁証法の問題』も多くの改版を重ねていて、そのたびに内容にもさまざまな彫琢が施されている。またメランヒトン以外の編集者による見解が付加されていることもある。中でもメランヒトンの娘婿にあたるポイツァーによる習慣や人間の質(状態)の改善、すなわち教育についての思想は、メランヒトンの霊魂論を基本にして、その後マールブルク大学のゴクレニウスやその弟子カスマンらによる、心理学(Psychologia)や人間学(Antholopologica)という用語と学問の成立につながる。そうした思想史的発展のプロセスを、原典資料テキストに即しながら丁寧にたどりつつ明らかにしたい。
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