研究課題/領域番号 |
22K00479
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
猪俣 紀子 茨城大学, 人文社会科学部, 准教授 (20734487)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | パリジェンヌ / 日仏交流 / フランスイメージ / フランス文化 |
研究実績の概要 |
今年度は戦後日本で大衆女性たちがフランスを語り出すようになった段階として大衆化と若年化の2つの点に着目し、その時期を特定した。 大衆化として1953年を中心時期とした。戦後洋裁学校が隆盛した時期であり、またクリスチャンディオールのファッションショーが日本で初めて行われた年でもある。洋裁学校へ通う巨大な集団である大衆の若い女性たちがミシンを踏みながらパリ、パリジェンヌへの憧れを身体化した時期であり、ここでパリジェンヌイメージが若い女性たちに広く共有されることとなった。 また、若年化としては67年とした。64年から日本で海外渡航自由化がはじまり、社会で外国への興味が増す。60年代後半から少女マンガ誌で少女読者たちに向けても海外を舞台にした物語が増加していく。外国といっても西欧の国に限られていたが、少女たちに夢を見る装置として機能し人気を博した。 このふたつの傾向があったことはその後のパリジェンヌイメージの拡大に大きく影響した。当時少女たちのファッション雑誌としても機能した少女マンガ誌のなかの「憧れ」は、70年代以降創刊される女性向けファッション誌に場所を移す。この50年代、60年代のパリジェンヌを語る女性の大衆化と若年化が、パリ、パリジェンヌへの憧れを掻き立て、現代の女性向けメディアで続くパリジェンヌ幻想へと続く直接的な流れを作った重要な画期であったことが明らかになった。 また日本におけるフランスイメージの特殊性を考察するために、アメリカにおけるフランスイメージについても調査を開始した。アメリカにおいても長らくパリモードはファッションの先導者であり、19世紀末から『VOGUE』はパリモードの型紙を販売し、発表されたルックを正確に大衆化することがその役割であった。また20世紀作成のアニメ作品でも作品価値を高める目的でフランスモチーフが多々取り入れられていることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日本におけるパリジェンヌイメージがいつどのように形成されたのかを明らかにするにあたり、ふたつの重要な時期が特定できたため。またこの形成の過程がその幻想を強め、日本独特のパリジェンヌイメージを構築した様子が、フランスのパリジェンヌイメージアンケートとの比較からもわかった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は日本の女性向け大衆メディアにおけるパリ、パリジェンヌがどのように描かれていたかについてさらに分析を進める。とくに少女マンガ誌は、その後70年代から創刊される女性ファッション誌へ与えた影響は大きいと考えるため精査する予定である。少女マンガにおけるパリ、パリジェンヌの描写は年代によって変化がみられるため、その変遷にも注目したい。また引き続きアメリカのフランスイメージ、日本におけるアメリカイメージにも着目し、日本のパリジェンヌ幻想の特殊性について明らかにしていく。
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