研究課題/領域番号 |
22K00505
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
大島 義和 名古屋大学, 人文学研究科, 教授 (40466644)
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研究分担者 |
宮地 朝子 名古屋大学, 人文学研究科, 教授 (10335086)
佐野 真一郎 慶應義塾大学, 商学部(日吉), 教授 (30609615)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 名詞述語文 / ウナギ文 / 人魚構文 / 文末名詞文 / 状態述語文 |
研究実績の概要 |
本研究では、以下の3つの課題がたてられている。(1) 日本語および英語に見られる有標的名詞述語構文を意味論・文法論的観点から仔細に検討し、既存研究における分類・分析を発展させる。(2) 種々の有標的名詞述語構文に述語名詞として参与しうる名詞群を、用例収集や容認度調査を通じて同定し、現代日本語の語彙体系のより精密な記述に貢献する。(3) 有標的名詞述語構文の使用様態の歴史的変遷を、構文レベル・語彙レベルで調査し、文法化の観点からの知見を得る。 課題 (1) に関して、2年目となる2023年度には、初年度に構築した英語および日本語における「属性指定型名詞述語構文」(『その車はめずらしい色だった』の類)「関係記述型名詞述語構文」(いわゆる「人魚構文」の一種);『山田さんは明日出発する予定だ』など)「オープンエンド関係型名詞述語構文」(いわゆる「ウナギ文」;『僕はウナギだ (僕が注文したのはウナギだ)』など)に関する意味的・文法論的特徴の記述を発展させた。日英語において「属性指定型名詞述語構文」に参与しうる名詞の意味クラスの分類や「関係記述型名詞述語構文」の下位種の性質の同定、「オープンエンド関係型名詞述語構文」が自然に使用できる語用論的条件について知見を深め、形式意味論的な分析を精緻化することができた。成果をまとめた論文は学術雑誌の査読を受け、一定の評価を受けた。査読結果をふまえて再投稿を行い、再査読を受けている。また、成果を国際ワークショップで発表することができた。 課題 (3) については、大きな進展はなかったものの、非名詞的な表現から名詞的な表現への文法化をあつかったケーススタディとして「ならで(は)」を取り上げた研究の成果が論文(書籍内所収論文)として刊行された。 課題 (2) については進展が乏しく、今後分担者間で連携しながら、データ収集の方法・方針を確立させる必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理論的な観点から研究課題に関する知見を深め、すでに1編の学術論文としてまとめている。この論文において提案された定式化・分析を核として、今後、体系的な語彙論的調査、歴史言語学および類型論的な発展につなげていくことができると期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
すでにある程度確立した理論的分析をもとに、以下の方向で研究を発展させることを予定している。(1) コーパスデータ等を利用して、種々の有標的名詞述語構文に参与しうる名詞の同定・分類を行う。(2) いくつかの語彙項目に着目して、もともと無標的な用法しかなかった名詞が「属性指定型名詞述語構文」「関係記述型名詞述語構文」の主名詞として用いられるようになる過程についての知見を深める。(3) 朝鮮韓国語、中国語、英語以外のヨーロッパ諸語における有標的名詞述語構文の使用様態について調査し、類型論的な観点からの考察を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
学術発表および打ち合わせに関わる出張のための費用が予想を下回ったために残額が生じた。2024年度に、学会発表の採択状況などによって旅費または物品購入費として使用する計画である。
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