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2023 年度 実施状況報告書

不本意退職に対する実効的な法的救済と手続的規制の研究

研究課題

研究課題/領域番号 22K01192
研究機関九州大学

研究代表者

山下 昇  九州大学, 法学研究院, 教授 (60352118)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード退職 / 支給日在籍要件 / 賞与 / 労働法 / 賃金 / 個別労働紛争解決制度
研究実績の概要

退職(自己都合退職や退職勧奨)をめぐる裁判例や退職時期の選択をめぐる裁判例を検討した。また、行政が公表している個別労働紛争解決制度の実施状況等を検討した。「考課対象期間満了後の病死による退職と賞与の支給日在籍要件」(やまぐちの労働685号6頁、2023年)では、病死により退職となった労働者の遺族が、支給日に在籍していないとして不支給となった賞与を請求した事件で、支給日在籍要件の適用を不合理とした点について検討した。また、「賞与と労基法―ボーナスは労働者にとって得か」(法律時報96巻2号128頁、2024年)では、日本の賃金体系における賞与の位置づけの変化を確認し、平均賃金や割増賃金の算定基礎から賞与が除外されていることの法的効果を多面的に検討し、支給日在籍要件等を通じて、労働者の退職時期の選択に影響を与えている可能性を考察した。
さらに、退職の「合意」の成否に関する裁判例の検討を進めているが、日本の裁判例において、退職の意思表示の判断については,「労働者にとって生活の原資となる賃金の源である職を失うという重大な効果をもたらす重要な意思表示であるから,退職の意思を確定的に表明する意思表示があったと認められるか否かについては,慎重に検討する必要がある」とする裁判例が、近時多くなっている。また、労働者の内定辞退や勤務開始早々に退職する(その際、退職代行サービスを利用する)ことが問題となっており、若年層を中心としたミスマッチによる退職をどのように防ぐかが企業にとって課題となっている。こうした新しい動向についても研究を進めている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

中国や日本国内での調査を行うことも予定していたが、今期の当初は、Covid-19の影響も残っており、調査等は行えなかった。しかし、文献研究(判例研究を含む)を中心に退職をめぐる紛争に関する研究を進めた。また、定年退職後の高年齢者雇用についても、研究を進めており、今後、公表する予定である。
また、中国における退職をめぐる法状況や労働紛争解決機関の現状についても研究を進めており、2024年度までにまとめていく予定である。

今後の研究の推進方策

現在進めている退職に関連する日本と中国の政策の動向や裁判例の分析を継続する。あわせて、2024年度は、日本法の裁判例の状況を整理し、また、労働紛争解決機関における辞職・退職をめぐる紛争の経年変化や内容を検討する。そして、行政機関での辞職・退職紛争の解決ルールを検討していく。中国についても、文献研究を中心にまとめて、日中比較をしつつ、中国の状況を参考に、解決ルールに反映させていく。この2年間で進めてきた研究成果を研究期間の最終年としてまとめていくこととする。

次年度使用額が生じた理由

Covid-19の影響が残ったため、中国及び国内の調査を控えたことから、2023年度において、旅費の執行額が少なかった。そのため、次年度使用額が生じた。2024年度においては、こうした調査を積極的に行い、辞職・退職をめぐる労働紛争の現状と課題を精査していく。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2024 2023 その他

すべて 雑誌論文 (4件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] 賞与と労基法―ボーナスは労働者にとって得か,2024

    • 著者名/発表者名
      山下昇
    • 雑誌名

      法律時報

      巻: 96巻2号 ページ: 128頁-134頁

  • [雑誌論文] 考課対象期間満了後の病死による退職と賞与の支給日在籍要件2023

    • 著者名/発表者名
      山下昇
    • 雑誌名

      やまぐちの労働

      巻: 685号 ページ: 6頁-7頁

  • [雑誌論文] 内定者の酒席等での言動を理由とする内定取消の有効性2023

    • 著者名/発表者名
      山下昇
    • 雑誌名

      やまぐちの労働

      巻: 688号 ページ: 4頁-5頁

  • [雑誌論文] 入試手当支給取扱いの変更と入試手当請求権の存否2023

    • 著者名/発表者名
      山下昇
    • 雑誌名

      社会保険労務士ふくおか

      巻: 167号 ページ: 30頁-33頁

  • [備考] 研究者情報(山下昇)

    • URL

      https://hyoka.ofc.kyushu-u.ac.jp/search/details/K003123/research.html

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公開日: 2024-12-25  

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