研究課題/領域番号 |
22K01346
|
研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
松本 俊太 名城大学, 法学部, 教授 (90424944)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
キーワード | アメリカ連邦議会 / 政党組織 / 分極化 / 大統領制 / 議院内閣制 |
研究実績の概要 |
本研究は、アメリカ連邦議会における二大政党の分極化について、その2つの側面である議員のイデオロギーの分極化と議会内政党の強化のうち、時代を経るにつれて後者が主になってきていること、そして、その帰結として、大統領与党が多数党のときに限り、大統領と議会指導部の合意に基づいて、超党派の合意を経ずに大統領の選挙公約を実現に移そうとする「疑似的な議院内閣制」が登場してきたことを論じる。これらを実証するための分析手法は、議員の党派的な行動や党派的な立法過程を説明する計量分析と、1970年代以降の議会内政党の発達の歴史とその帰結に関する比較事例研究の2つからなる。 今年度は、主に研究の遂行に必要なインプットに徹した。具体的には、計量分析を行うためのデータ・セットの整備に着手したことと、日本国内で入手できる文献資料の収集と、その文献資料の購読の2点である。 データ・セットの整備は、かねてより作成を行っていたものの拡張とクリーニングを行った。データ・セットに収められている情報は、1973年から2020年のアメリカ連邦議会に所属していた全ての上下両院議員について、議員の属性(年齢・性別など)・経歴(選挙区・当選回数・所属委員会・党内の役職など)・議会内での投票行動の記録などである。 また、入手した文献資料に基づき、長めの学術論文を2本執筆し、今年度中に1本(2回連載・合計で約45,000字)を公表した。もう1本は、今年度行われた投稿および査読を経て、翌年度に公表される予定(英文・約9,000語)である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、補助事業期間内に、2つの形で研究成果を公表することを計画している。第1に、議員の党派的な行動や党派的な立法過程を説明するための計量分析を行った学術論文を執筆する。第2に、主に1970年代以降の議会内政党の発達の歴史とその帰結に関する比較事例研究をまとめた単著を出版する。前者については当初の計画から遅れているが、かわりに、後者の計画を前倒ししている。したがって、進捗状況の総評としては、両者が相殺された形になる。 前者が計画より遅れている理由は、データ入力を行う研究補助員1名を雇用する計画にしているところ、この業務を行えるだけの英語の読解力とアメリカ政治研究の基礎知識を有する人材が見つかっていないことである。研究補助員の確保は引き続き困難が予想されるが、万が一適任者が見つからない場合は、研究代表者のみでデータ入力を行わざるを得ない。 後者が計画より早く進展している理由は、第1に、今年度に予定していなかった学術論文2本の執筆を終えたことである。2本とも、単著の形に合わせるための要約と修正を行った上で、単著の一部となる予定である。第2に、この要約と修正の作業を、既に進めている。
|
今後の研究の推進方策 |
4年間の研究期間のうち、残り3年間の研究計画は、以下のとおりである。概ね、申請時に提示した計画の1年目の予定の一部を2年目に、2年目の予定の一部を1年目に移す。 2年目は、1年目に十分に進められなかった、データセットの整備を行い、これを用いたデータ分析を伴う論文を執筆する。これと並行して、単著の執筆を進めるとともに、単著の内容について、日本国内で研究会報告を行い、出版に備える。その際、論文作成や計量分析を行うために必要なソフトウェアを、必要に応じて購入する。また、二次資料だけでは足りない情報を補うべく、一次資料の収集を目的とする現地調査を1回行うことを計画している。候補地は、議会内政党の強化が本格化した1970年代に下院議長等の要職にあったティップ・オニールの業績を所蔵するオニール図書館(マサチューセッツ州ボストン)、および連邦議会図書館(ワシントンD.C.)である。 3年目は、引き続き、データ分析を伴う論文の執筆と学会報告を行うとともに、単著の執筆を続ける。可能であれば、この年度内に単著を刊行する。 4年目は研究の公表を目指す。単著を刊行するとともに、論文については、学会報告で得られたフィードバックを基に加筆修正を行い、ジャーナルに投稿する。 残る3年間の研究期間を通じて、本研究の内容に関わる研究報告や、本研究を遂行する上で必要な情報収集や情報交換のために、日本およびアメリカで開催される学会や研究会に、適宜参加する。そのための旅費を支出する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初800,000円の使用を予定していたところ、実際の使用額は783,353円・残額は16,647円である。つまり、年度内に予定の97.9%を使用しており、2.1%は誤差の範囲と認識している。この残額は、翌年度の元々の請求額である900,000円と合算して使用する予定である。
|