研究課題/領域番号 |
22K01513
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研究機関 | 広島修道大学 |
研究代表者 |
黒阪 健吾 広島修道大学, 経済科学部, 准教授 (60712049)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | マッチング理論 / フィールド実験 / 耕地分散 |
研究実績の概要 |
マッチングアルゴリズムを用いた農地集約システムの有効性について、シミュレーションとフィールド実験を用いて検証した。
1. シミュレーション: 耕地分散の問題を解決するため、Manjunath & Westkamp (2021)によるCIRPアルゴリズムを応用した農地集約システムが有効であることを、シミュレーションによって示した。シミュレーションは岩手県内の5ha以上の農家が耕作する農地を対象とし、農家の農地に対する選好や農家の「優先順位」(priority)に関する仮定を置いたうえで市町村ごとに行った。その結果、農地の交換システムにより県全体で14.12%の農地が交換され、各農家が耕作する農地の重心距離が6.70%減少することが明らかになった。ただし、農地交換の起きやすさや農地の集約に与える効果は、農家の農地に対する選好や優先順位に強く依存する。
2. フィールド実験: 農地集約システムの有効性を検証するために、岩手県おび盛岡市と共同でフィールド実験を行った。実験には13の経営体が参加し、タブレット端末を用いて耕作を希望する農地についての情報を収集した。参加者の耕作希望情報を基に集約案を作成したところ、約10.5%の耕作地が互いに利害が一致した形で交換可能であり、圃場間の移動時間と関連する重心距離(耕作地の重心となる地点から各圃場までの距離の総和)は約8.5%、圃場内の移動時間と関連する団地(作業を中断せずに行うことができる圃場の集まり)数は約5.8%減少することが明らかになった。また、アンケートでは、過半数(7人)の参加者が、集約案への満足度を10点満点中5点以上と評価した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
フィールド実験で使用するアプリの開発費用が膨らんだものの、当初の研究計画どおりに実験を実施することができた。また、アプリやその周辺の技術を農地集約システムとして特許出願したことで、今後研究成果を社会実装する道筋がついた。
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今後の研究の推進方策 |
23年度は、民間の研究助成を得てアプリを改良することで、22年度に実施した1地区13人と同規模のフィールド実験を複数の地区で実施する予定である。また、実際に農地集約案に沿った形での耕作権の交換に応じる参加者を募り、交換前後における作業時間の変化をGPS端末を用いて計測することを計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
22年度に実施した実証実験では、参加者に貸与したiPadが破損し業者に補償する事態に備え、年度内に一定額を確保しておく必要があったため。22年度の残余分は23年度請求分と合わせ、新たな実証実験の実施費用に充てる予定である。
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