研究課題/領域番号 |
22K01642
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研究機関 | 金城学院大学 |
研究代表者 |
小室 達章 金城学院大学, 国際情報学部, 教授 (00335001)
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研究分担者 |
高浦 康有 東北大学, 経済学研究科, 准教授 (00340216)
藤川 なつこ 神戸大学, 海事科学研究科, 准教授 (30527651)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 非営利組織 / NPO / 組織不正 / ガバナンス |
研究実績の概要 |
今年度の研究概要は以下の3点である。 第1に、非営利組織に関する文献レビューや資料収集を基に、ヒアリング調査の枠組みを構築するとともに、東北地方および東海地方の非営利組織経営者に対して、ヒアリング調査を実施することができた。非営利組織を対象とした ヒアリング調査では、組織不正の防止だけでなく、事業承継、後継者育成、他組織との協働など、さまざまな観点から非営利組織における経営現象を捉えることができた。 非営利組織における協働のあり方については、学会でのワークショップにおいて発表した。 第2に、非営利組織不正に関するデータセットを作成し、不正の種類、不正行為者、不正規模、不正期間、不正開始時期、組織の解散について、定量的デー タに基づいて探索的に分析した。その結果、不正を開始する時期が若い組織ほど、それが発覚すると解散率が高くなるなど、いくつかの非営利組織不正に関する傾向を導出することができた。この研究成果は、学会報告および学会誌論文において発表するとともに、非営利組織の機関誌において報告した。 第3に、組織不正全般に関する文献研究を実施した。文献からは、組織不正における多様性を認識することや、特に、非営利組織においては、行政との関係、企業との関係など、他組織との連携・協働において出現する不正にも注目する必要性を認識することとなった。さらに、同型化圧力などの制度的な影響についても考慮する必要性についても認識することとなった。組織不正における多様性については、業界誌において、また、同型化圧力については、学会報告において発表した。非営利組織の連携・協働と不正の関連性については、学会報告での発表に向けて準備をしているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画以上に進展していると評価している理由として、初年度から、学会誌への掲載、学会報告、実務家向けの業界誌への掲載など、数多くの成果を出していることをあげることができる。これ以前のプロジェクトにおいても、同様に非営利組織不正を研究対象としていたことや、研究代表者が参画している別のプロジェクトでも、非営利組織を対象としていることもあり、かなりのシナジー効果が得られたことに大きな要因があると考えられる。また、コロナ禍が明けて、ヒアリング調査を実施できたことも、研究におけるアイデアを促進させることに繋がったと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでと同様に、非営利組織に関する文献レビューや資料収集を積み重ねていきたい。特に、非営利組織不正に関する先行研究だけでなく、非営利組織のガバナンス、事務局と理事会との関係性、非営利組織の組織特性・経営者特性についても考察を深めていきたい。また、より一層のヒアリング調査を実施し、実際に非営利組織の不正防止に携わっている担当者や、非営利組織経営者の考え方について情報を収集し、現実に即した不正の発生メカニズムや、その防止策を解き明かしていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
これまでの研究プロジェクトにおける蓄積があったため、予定していたよりも文献・資料の購入に対して支出する必要がなくなり、予定額よりも支出を少なくすることができた。また、コロナ禍の影響が緩和されたとはいえ、全面的にヒアリング実施することができず、旅費の支出も少なくなった。今後は、ヒアリング調査を実施するための旅費や、不正事例についての定量研究を実施するため、統計処理用のソフトや機材の購入費に充当する予定である。
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