研究課題/領域番号 |
22K02238
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
上野 正道 上智大学, 総合人間科学部, 教授 (50421277)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | シティズンシップ / 民主的教育 / ジョン・デューイ / ガート・ビースタ / コミュニティ |
研究実績の概要 |
シティズンシップと公共性のための民主的教育をコミュニティ論の視点から検討する研究について、今年度は昨年度に引き続き、ジョン・デューイの教育思想がヨーロッパや東アジアでどのように受容され、理論的更新が図られているのかを中心に研究を進めた。今年度の活動として力を入れたのは、主に以下の二点である。 第一は、日本におけるデューイの民主的教育の受容と発展を明らかにしたことである。その一つとして、代表者が編著でRoutledgeから出版したPhilosophy of Education in Dialogue between East and West: Japanese Insights and Perspectivesの著書がある。この中で、近代以降の日本のデモクラシー/民主主義がどのように成立し、発展してきたかを考察し、デューイの教育思想が果たしてきた影響について明らかにした。その影響について、1)大正デモクラシーにおける受容、2)戦後日本の教育改革における影響、3)1990年代後半から現代に至る影響の三つの時期に分類した。そして、デューイの教育論が日本の民主的教育やコミュニティとしての学校に与えてきた影響を明らかにした。 第二に、オランダ出身の教育哲学者であるガート・ビースタの教育哲学を取り上げて、彼がデューイと進歩主義の教育思想をどのように更新し発展させようとしているのかについて考察した。特に、教育の機能を「資格化」「社会化」「主体化」の三つに分け、政治的主体化をもとにした民主的教育とシティズンシップ教育の構想がどのように提示されていたのかを考察した。ますます進展するグローバル化の中で、シティズンシップと公共性のための民主的教育をどのように構想するのか、その理論的、実践的な課題を明らかにする研究を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までの進捗状況は極めて順調である。編著Philosophy of Education in Dialogue between East and West: Japanese Insights and Perspectivesの著書が出版されたことに加え、代表者の『学校の公共性と民主主義――デューイの美的経験論へ』(東京大学出版会、2010年)の中国語訳も山東教育出版社から出版され、また国内外の学会等での発表も実施し、順調に進められている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策として、引き続き、シティズンシップと公共性のための民主的教育にかかわる資料の収集と理論的、実践的な分析を進めることがある。2024年度は在外研究を利用して、4月から5月はコロンビア大学ティーチャーズ・カレッジに、6月から7月はエディンバラ大学に客員研究員として訪問し、デューイ研究で知られるデイビッド・ハンセン教授や、本研究の研究対象でもあるガート・ビースタ教授のもとで研究することができるため、大いなる発展が期待できる。主に国外での資料探索に加え、国内外の学会等で発表し、論文を執筆して研究成果を公表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年度に当初予定していた国外での調査等の出張旅費を使用しなかったため。2024年度は、コロンビア大学、エディンバラ大学に滞在し、資料調査や学術交流、セミナー発表を実施し、研究の発展を目指すことにするため。
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