研究課題/領域番号 |
22K02407
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
中島 寿子 山口大学, 教育学部, 教授 (70293727)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 保育プロセスの言語化 / 保育記録 / 園内研修 / 協同的省察 / SOAP / ALACTモデル |
研究実績の概要 |
2022年度に協力園2園(幼稚園1園、保育園1園)の園内研修に参加し、ALACTモデルにおける「具体化を促す問い」やSOAPの視点を取り入れた支援を実施すると、保育者が自身の保育を他者に伝える必要性を実感するようになり、子どもの姿に基づく保育プロセスの言語化も促進された。2023年度はこの園内研修で取り上げた保育記録、園内研修の記録、園内研修後のポートフォリオ記録をさらに分析し、以下の点も効果的であったことを明らかにした。①同じテーマ・参加者で継続的に取り組む、②日々の保育をもとにした記録を取り上げる、③記録を書いた保育者の問題意識をふまえて話し合う、④同じ用紙にポートフォリオ記録を書いていく。 課題も明らかとなった。幼稚園では、子どもの姿についての読み取りをもとに、保育者としての願いや環境構成を具体的に考えて言語化すること、保育園では、園内研修の参加者で共有したことを、同じクラスを担任する若手保育者とも共有する方法である。 この成果と課題をふまえ、2023年度も協力園2園で園内研修を実施した。幼稚園では、保育者が意図しなかった子どもの姿に着目した記録を取り上げ、読み取りについて保育者同士で話し合うことが増えた。しかし、保育者としての願いやそのための環境構成を具体的に考えることは難しいことがあり、記録の工夫や日々の保育の中での話し合いのもち方も今後の課題となった。保育園では、園内研修の中で大切にしたいと考えたことを、同じクラスを担任する若手保育者とも共有するための記録の書き方や活用方法、具体的場面をもとにした伝え方についても話し合った。若手保育者の記録をもとにしたクラス会議を試みた体験も報告し合う中で、自分自身が若手保育者の考えを知ろうとすること、言葉を引き出すことの大切さと難しさも実感し、保育園でも日々の保育の中での話し合いのもち方が今後の課題となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度と同様に、2023年度も協力園2園における園内研修を継続的に実施した(幼稚園5回、保育園6回)。その結果、幼稚園で計10回、保育園で計12回の園内研修を2年間で実施することができた。 これらの園内研修の内容は録音し、その録音データの文字起こしも終了した。今後はさらに匿名化処理等を行い、QDAソフトを用いた分析にも取り組む予定である。 2024年度には、園内研修に参加した保育者を対象として、2年間の園内研修の進め方についてどのように捉えているか(よかったと考える点、このように進めてもよかったのではないかと考える点)、現在の子ども観・保育観について明らかにするためのインタビューを個別に実施することを計画している。現在、そのための倫理審査を受けているところである。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、協力園2園で園内研修に参加した保育者を対象として、2年間の園内研修の進め方についてどのように捉えているか(よかったと考える点、このように進めてもよかったのではないかと考える点)、現在の子ども観・保育観について明らかにするためのインタビューを個別に実施する。 また、各園の2年間の園内研修に提出された保育記録、園内研修の記録、園内研修後のポートフォリオ記録をもとに、園内研修に参加した保育者の保育についての語りや記録の変化、その変化に関係したと考えられる具体的支援、この園内研修の課題等についても、園や個人による相違点も含めて、明らかにしていく。 これらの研究成果をもとに、子どもの姿に基づく保育プロセスの言語化促進に効果的な支援プログラムも開発できるようにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年度も引き続きオンライン開催の学会があったため、旅費を予定よりも使用しなかった。 園内研修の音声データの文字起こしのための謝金も、予定よりも使用しなかった。協力園2園とも、園内研修の参加者が多く、参加者でないと話者の区別がつきにくいため、始めに自分で大まかな文字起こしをした上で依頼したためである。 予定より使用しなかった予算は、次年度の旅費にあてる予定である。
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