研究課題/領域番号 |
22K02569
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研究機関 | 京都教育大学 |
研究代表者 |
石川 誠 京都教育大学, 教育学部, 教授 (00293978)
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研究分担者 |
池田 恭浩 京都先端科学大学, 人文学部, 教授 (00814550)
土屋 雄一郎 京都教育大学, 教育学部, 教授 (70434909)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 中学校社会科公民的分野 / 起業 / 授業モデル開発 |
研究実績の概要 |
本研究は,平成29年告示の中学校学習指導要領社会科公民的分野において初めて取り入れられた「起業」に関して,経済学,社会学などからの「起業」の捉え方の議論を整理し,「起業」や「起業」を支える日本の社会のあり方を分析,検討し,その成果をもとに日本の社会に適した「起業」の形を明らかにした上で,中学校社会科公民的分野で実践可能な授業モデルを開発することを目的としている。 本研究は理論研究と事例研究・開発研究の二本立てで進める計画であり,今年度は理論研究を中心に行い,日本における「起業」の実態を明らかにし,その位置づけと課題を分析した。ここで明らかになったことは,日本における一般的な働き方が高校あるいは大学を卒業して役所や企業に勤める形であり,「起業」ということが働き方の選択肢の中にほとんど入っていないという実態であり,その結果として「起業」が日本の社会に浸透しておらず,「起業」の多さを表す開業率のデータも欧米諸国,例えば,米国や英国などと比較しても低い水準に留まっているということである。こうした実態の背景としては,「起業」を取り巻く社会のあり方が問題であり,「起業」を個人の問題として捉えるのではなく,それを取り巻く社会のあり方を含めて考えていくことが重要であるという認識に至った。これについては,「起業」を社会がどう支えていくのか,「起業」の利益を社会全体に行き渡らせるためにはどのような社会の仕組みが必要なのかという視点からの分析,検討を進めつつある。 今年度については国内の事例研究として,「起業」に関する教育実践を2件程度調査する予定であったが,新型コロナ感染症の影響で対象となる実践を行っている機関との調整が整わず,今年度中には実施できなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の1年目については,「起業」に関して経済学,社会学などの視点から分析を加える理論研究を中心に,国内で「起業」に関する教育実践を調査するという事例研究も併せて行うという計画であった。 理論研究については,「起業」に関して主に経済の視点から分析,考察を行った。その結果は上記の「研究実績の概要」に示した通りである。今年度は主に日本において「起業」がどのような実態であるのかを中心に分析した。日本において「起業」というとベンチャー企業が想起されるが,ベンチャー企業の本場である米国との比較などについては十分に議論が進めなかったため,次年度に持ち越した。また,「起業」を取り巻く社会についての分析,考察については,当初より次年度に渡って行う計画であったため,今年度については計画通りデータ収集など実態分析を中心に研究を行い,「起業」を取り巻く社会のあり方についての分析,考察は次年度に継続している。 国内で「起業」に関する教育実践を調査する予定であった事例研究については,上記の通り,新型コロナ感染症の影響があって実施できなかった。これについては次年度に実施する予定である。 以上のことから,現在までの進捗状況に関しては,事例研究に遅れはあるものの,おおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の2年目の活動については,理論研究(1年目からの継続),事例研究,開発研究を行う予定である。 理論研究については,「起業」の実態についてベンチャー企業の本場である米国や英国などとの比較を通して,日本の「起業」の特徴や課題を分析,考察する。さらに,「起業」を取り巻く社会のあり方について,「起業」を社会が支えたり,「起業」の利益を社会に行き渡らせるためにどのような社会の仕組みが必要であるかということについて分析,考察を進める。 事例研究については,今年度実施できなかった分も含めて,国内における「起業」の教育実践を調査するとともに,後半から海外の教育実践の事例の調査を開始する。 開発研究については,理論研究,事例研究の成果をもとに,後半から日本の社会に適した「起業」の形や社会のあり方についての中学校社会科公民的分野で実践可能な授業モデルの開発に着手する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が発生した主な理由は,補助事業に係る用務のための国内出張(「起業」に関する教育実践の調査,当初は大分県と宮城県を予定)を予定していたが,新型コロナ感染症の影響で調査先との調整が整わず実施できなかったためである。そのため,出張にかかる経費支出がなくなったため次年度使用額が発生した。また,物品費で購入を予定していた書籍についても当初の予定よりも購入金額が少なく済んだため次年度使用額が発生した。 今年度実施できなかった国内での教育実践の調査は次年度に繰り越して実施する予定である。現状の新型コロナ感染症の状況からも実施可能と考えており,次年度使用額については当該調査のための経費として使用する予定である。
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