研究課題/領域番号 |
22K02569
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研究機関 | 京都教育大学 |
研究代表者 |
石川 誠 京都教育大学, 教育学部, 教授 (00293978)
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研究分担者 |
池田 恭浩 京都先端科学大学, 人文学部, 教授 (00814550) [辞退]
土屋 雄一郎 京都教育大学, 教育学部, 教授 (70434909)
小栗 優貴 京都教育大学, 教育学部, 講師 (20981484)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 中学校社会科公民的分野 / 起業 / アントレプレナーシップ / 授業モデル開発 |
研究実績の概要 |
本研究は、平成29年告示の中学校学習指導要領社会科公民的分野において初めて取り入れられた起業に関して、経済学、社会学などからの起業の捉え方を整理するとともに、起業や起業を支える日本の社会のあり方を分析、検討し、その成果をもとに日本の社会に適した起業の形を明らかにした上で、中学校社会科公民的分野で実践可能な授業モデルを開発することを目的としている。 本研究は理論研究と事例研究・開発研究の二本立てで進める計画であり、今年後は昨年度実施した理論研究の成果をもとにして開発研究を中心に実施した。今年度は授業モデルを開発するにあたり、サラス・サラスバシーが提唱したエフェクチュエーションという手法を取り入れることを検討した。このエフェクチュエーションは近年、ビジネススクールなどの起業家教育で取り入れられつつある考え方であり、これまでの起業の一般的な考え方であったコーゼーションとは対照的なものである。すなわち、コーゼーションが事前に設定された目標を達成することが考え方の中心であるが、エフェクチュエーションは自分が持っている手段を絶えず成長させつつ、それに合わせた目標も創り出していき、その目標を達成することに主眼を置いている。こうした起業についての考え方を授業モデルに取り入れることで、起業をソニーやホンダといった自分とはかけ離れた存在から身近なものとして捉えることができるのではないかと考え、エフェクチュエーションを視点とした授業モデルを開発した。この開発研究の成果は、令和5年12月9日に開催された日本シティズンシップ教育学会第4回大会において発表した。現在は開発した授業モデルの実践に向けた準備をしていることろである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の2年目については、起業に関して経済学、社会学などの視点から分析を加える理論研究と事例研究・開発研究を併せて行うという計画であった。 理論研究については、エフェクチュエーションという手法を取り入れて起業について分析・考察を行った。その結果としてエフェクチュエーションを授業モデルに取り入れることとして開発研究に繋げた。理論研究で今年度もう一つ行う予定であった起業を取り巻く社会についての分析・考察については十分な資料・データが集まらず十分な成果が得られていないため、次年度に継続して実施することとした。 開発研究については、上記の「研究実績の概要」に示した通り、エフェクチュエーションを視点とした授業モデルを開発し、「エフェクチュエーションを視点としたキャリア教育の開発ー総合的な学習の時間「自分は何をどのように起業するか」を事例にー」という題目で日本シティズンシップ教育学会において発表した。 また、国内で起業に関する教育実践を訪問調査する予定であった事例研究については、実践機関との調整が整わず、今年度中には実施できなかった。 以上のことから、本研究の現在までの進捗状況に関しては、事例研究に遅れはあるものの、「おおむね順調に進展している」と評価している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の3年目の活動については、理論研究のまとめ、事例研究及び開発研究を行う予定である。 理論研究については、エフェクチュエーションの手法をベースに起業についての考え方をまとめる。その際に、起業を取り巻く社会のあり方、特に起業が起業の当事者だけではなく社会に対しても利益をもたらすようなあり方について、効率と公正の視点から分析・考察を加えていく。 事例研究については、今年度実施できなかった分も含めて国内における起業の教育実践を調査するとともに、海外の教育実践の調査も行う。海外の教育実践については、オランダに調査に赴く予定である。オランダは経済活動におけるスモール・ビジネスの占める役割が大きく、起業に関する教育もアントレプレナーシップ教育やシティズンシップ教育においてさかんに行われているという理由で調査対象国に選定した。 開発研究については、今年度作成した授業モデルを京都教育大学附属桃山中学校において実践する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用が発生した主な理由は、補助事業に係る用務のための出張(起業に関する教育実践の調査)を予定していたが、先方との調整が整わず実施できなかったためである。そのため、出張に係る経費支出が当初の予定よりも少なくなったため次年度使用が発生した。また、物品費で購入を予定した書籍などについても購入金額が当初の予定よりも少なく済んだため次年度使用が発生した。 今年度できなかった国内での教育実践の調査は次年度に繰り越して実施する予定である。また、次年度には海外の教育実践の調査の実施を予定しているが、現状の為替の円安により、本研究申請時に想定したよりも費用が多く必要となることが予想される。そのために次年度に繰り越した分については当該国内及び海外調査のための経費として使用する予定である。
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