研究課題/領域番号 |
22K03145
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
山崎 勇 信州大学, 学術研究院医学系, 助教 (80554576)
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研究分担者 |
森田 洋 信州大学, 学術研究院医学系, 教授 (10262718)
高橋 徹 信州大学, 学術研究院医学系, 准教授 (70313856)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | ポストベンション / 自殺 / 大学生 |
研究実績の概要 |
昨年度の研究結果をもとに、信州大学版ポストベンションマニュアルを作成した。このマニュアルは、信州大学での危機対応マニュアルも取り入れ、①組織的な対応、②連絡報告体制、③自殺のポストベンションマニュアルから構成される。可能な限り統計的な分析を行った結果を反映した。統計的な分析結果のみで必要な情報すべてを記述することは不可能であるため、過去の対応経験に基づいた記述も含まれる。緊急時の対応に使用できるマニュアルであるために、可能な限り実際の場面を想定しやすい具体的な記述とした。 また、この信州大学版マニュアルの内容と海外の研究を比較して検証を行った。海外のポストベンション対応のレビュー論文との比較の結果、信州大学版のポストベンションマニュアルは先行研究の結果と概ね矛盾しないことが明らかとなった。 さらに、他大学の協力を得て、この信州大学版マニュアルを基に聞き取り調査を行った。大学の規模や制度などが異なる大学を対象とした。これまで5校で調査を行い、大学の制度や規模、学生支援体制の差異から信州大学版マニュアルとは異なった対応が実施されていることが明らかになりつつある。大学の規模によって準備されている支援体制が異なるため、複数人の担当者で役割分担して対応可能な大学がある一方、人的資源が少ない大学では保健管理・学生相談の担当者がすべての対応を行わなければいけないこともあった。また、大学の所在地によって自殺の発生状況が大きく異なり、それによって大学側が対応する内容が異なっていた。 さらに、信州大学版マニュアルでは留学生の自殺に関する記述がなかったため、協力校に情報提供を依頼して対応マニュアルを入手している。 以上のような知見は今後開発する大学版マニュアルに組み込む予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
信州大学版ポストベンションマニュアルが完成し、これを基にして他大学への聞き取り調査を開始している。制度や規模が異なる大学から各大学における自殺のポストベンション対応に経験を聴取し、対応の方針や工夫などの情報を収集している。 調査には各大学の協力が必須であるが、学会での成果発表を通じ本研究を説明し、本研究の意義を理解していただいた他大学からの協力を得られている。令和5年度に予定していた聞き取り調査は順調に実施したが、今後も協力校を募り調査を継続していく。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度は協力校からの聞き取り調査を継続し、他大学におけるポストベンション対応についての情報収集を行う。当初計画より多くの大学から聞き取り調査に承諾を得られ、時間的制約があり調査未実施ではあるが、協力の意向を示していただいた大学も複数ある。今後、調整を行って聞き取り調査を実施する予定である。調査対象となる大学は制度や規模が異なる大学を中心に行うが、ポストベンション対応を行った経験のある大学のみならず、経験のない大学からも関心を寄せていただいており、各大学からポストベンションマニュアル作成に必要な情報を聴取していく。 調査では制度や規模が異なっても各大学でマニュアルが作成できるように選択肢を増やすことを目的として、信大版マニュアルと各大学での取り組みの差異について調査を行う。 今後も引き続き学会発表などを通じて協力校への呼びかけを行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和5年度は予定通り聞き取り調査を行ったが、旅費が安価で済んだ。また、研究の方向性からソフトウェア(プラグイン)の購入の必要がなくなった。そのため、次年度使用額が生じた。 (使用計画) 当初計画より増えた協力校への聞き取り調査のために協力校を訪問する予定であり、旅費に使用する。
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