研究実績の概要 |
令和4年度には、音楽共演中の同調行動と主観的印象に与える要因に関する研究を進めた。本研究課題用に作成したシステムは、プログラムにパートナーと参加者それぞれの担当パートの音情報組み込んでおくことで、参加者は音を鳴らしたいタイミングでPCのスペースキーの打鍵での音楽共演とデータの記録を実現した。このシステムを用いることで、演奏経験のない曲であっても短時間の練習で共演を可能とした。 まず2021年度にデータ収集した予備的実験成果について分析を行ったのち、音楽共演中の同調行動と主観的印象に与える要因について2つの実験を行なった。予備的実験である1つ目の実験からは、パートナーが実験参加者とパートナー間の音産出時刻のずれの40% を, 次の音までの時間間隔に対して補正すると, ミスなく演奏を完了するまでの練習回数が減る, タイミング同期の精度が上がる, そして, 演奏に対する主観的難易度が下がることが明らかになった。音楽大学の学部生・大学院生が参加した2つ目の実験結果からは、ピアノ曲の高音部の右手パート担当条件と比較して、低音部の左手パート担当条件では、同調精度がより高いことを示した。また、パートナーのタイミング補正が楽しさの主観的印象の向上につながることも確認した。さらに、音楽的構造の複雑さ、テンポ、と共演の相互作用性が、同期精度と主観的印象に与える効果を検証した3つ目の実験では、パートナーと同時に演奏すると、音楽構造が複雑になるに従って、同期のずれがより大きく、難易度印象もより高くなるのとは対照的に、パートナーと2小節ごと交互に演奏する場面では、音楽構造が複雑になっても同期のずれに変化はなく、より演奏が容易であるとの印象を与えることが明らかになった。
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