研究課題
本研究の目的は、睡眠慣性に対する二度寝の効果を検証し、朝、快適に目覚めるための新たな起床方法を開発することである。本年度は、睡眠時間が短い場合でも二度寝の効果があるか、30分間と20分間の二度寝ではどちらが効果が高いか検討した。健常な若年成人8名(女性4名、男性4名、平均21.8±0.6歳)が、二度寝せず起こすか(0分条件)、起床時刻の20分前(20分条件)か30分前(30分条件)にいったん起こしたあと二度寝するかの3条件全てに参加した。各条件で1週間の間隔をあけ、1夜目を順応夜、2夜目を実験夜として2夜連続して睡眠ポリグラフ記録を実施した。実験夜では就床15分前にvisual analog scale(VAS)を用いて全般的活力(目覚め、眠気、意欲、疲労)と全般的情動(幸福、悲しみ、落ち着き、緊張)を測定した後、5分間の聴覚単純反応課題(聴覚課題)を行い、習慣的な就床時刻に就床してもらった。起床時刻はその6時間後とし、起床1分後からVASと聴覚課題、4分間の休憩をあわせた10分間を1セットとする作業を3セット実施した。実験の結果、0分条件と20分条件では、起床時の目覚めやパフォーマンスには差がなく、令和4年度と反する結果であった。令和4年度では、参加者は普段どおりの睡眠時間をとっていたが、本年度では睡眠時間を1時間短縮させた。睡眠不足の場合、起床時の睡眠慣性が強く現れることから、睡眠慣性によるネガティブな影響と、二度寝によるポジティブな効果が相殺されたことが示唆される。これに対して30分条件では0分条件よりも全般的活力が高く(p = .03)、聴覚課題の反応時間も速かった(p = .005)。これらの結果から、睡眠時間が十分確保できない場合は起床予定時刻の30分前にアラームを設定してその後二度寝をすると、起床後の睡眠慣性の影響を低減できることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
参加者は予定人数よりも少なかったものの、参加者一人あたり6夜×8人の48夜の実験を実施できた。睡眠不足による影響と、二度寝の長さによる効果の相互作用を確認することができた。
当初の研究計画どおり、令和6年度は、効果的な二度寝の長さについて、大学生を用いたフィールド実験を実施する。
当初の予定よりも実験参加者が少なくなったため、被験者謝金と実験者謝金の支出が減り、次年度使用額が生じた。次年度の実験における被験者謝金と実験者謝金の追加費用として用いる。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件)
Journal of Sleep Research
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