研究実績の概要 |
関-高橋はこれまでの研究で、ゴースト数1を持つmostly BRST exact演算子を導入することで、世界面であるディスクが持つPSL(2,R)ゲージ対称性の一部を固定し、開弦のtreeレベル2点振幅を求めた。そこで、本年度は、この演算子を用いて、開弦の1-loop 2点振幅を考えた。1-loopの場合の世界面であるシリンダーには、ディスクと異なり、Z_2対称性と並進対称性がある。我々は、mostly BRST exact演算子を挿入することにより、これらの対称性を固定し、2点振幅を計算した。その結果は、従来の方法で計算した開弦1-loop 2点振幅と、符号因子を除いて、一致した。これは、mostly BRST exact演算子が、開弦の新しいゲージ固定法として、1-loopレベルでも有用であることを示している。 閉弦においてtreeレベル2点振幅を導出しようとすると、PSL(2,Z)ゲージ固定のために、mostly BRST exact演算子の他に、ゴースト数3の演算子が必要になる。このゴースト数3の演算子は、レベルマッチング条件を満たさないが、本研究によって、Fadeev-Popovの方法で、必ずしもその条件が必要ではないことを示した。さらに、閉弦のゲージ固定のために、ゴースト数2の演算子も新しく定義した。これを用いることによって、1個の閉弦タキオンと2個の開弦タキオンからなる振幅を求めた。その結果は、符号因子を除いて、従来のゲージ固定法による結果と一致した。 エンタングルメントに関する研究として、Peschanski氏(IPhT, CEA-Saclay, フランス)と、非弾性散乱における終状態2粒子のエンタングルメント・エントロピーの定式化も試みた。
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