研究課題
半導体ウェハなどの製造に不可欠な加工技術である,加工物の上下両面を同時に研磨する両面研磨加工では,近年のDXの推進や省エネルギパワーデバイスの普及を受け,製造コスト削減をはじめとする性能向上が強く望まれている.しかし,その加工プロセスに関する理解はほとんど進んでおらず,革新的技術を着想できる状況にない.このため本研究では,両面研磨加工における重要な要素である加工物‐定盤間への研磨液浸入現象の解明に取組み,性能を向上させる技術を開発することを目的とする.観察に基づき研磨液挙動の浸入現象の解明を試みた2022年に続き,2023年度は研磨性能を評価できる研磨実験を通じ,研磨速度に影響する因子を検討した.興味深い成果の一つとして,加工物の厚みにより加工物‐定盤間への研磨液の浸入現象が大きく異なり,加工物の上面と下面の研磨速度が逆転することを明らかにした.これはユーザ毎に加工対象が異なるため,研磨特性に関して異なる知見をもっていることを裏付ける結果であり,一般的な理論の構築を目指す学術研究の意義を明らかにする結果であるといえる.さらに加工物上面の研磨速度において,これまで着目されることがなかった加工物を保持するキャリアの果たす役割が大きく,キャリアの最適化により研磨速度を向上できることを明らかにしている.このような取り組みから,両面研磨加工の性能を向上する技術を着想できており,その効果を2024年度に検討していく.
2: おおむね順調に進展している
加工物の厚みにより,上面と下面の研磨速度が逆転するこれまで知られていなかった現象を明らかにするなど,順調に加工物‐定盤間への研磨液浸入現象を解明できているといえる.また,最終的な目標である両面研磨加工の性能を向上する技術の着想もできている.このため,おおむね順調に進展していると判断している.
これまでの検討で着想されているキャリアと定盤に着目した新技術により,両面研磨加工の性能を向上効果について検討していく.なお,これまで加工物の厚みによる研磨特性の違いを明らかにしているが,加工物のサイズによっても研磨特性が異なると考えられる.このため,大型加工機を有している民間企業とも協力することで,より一般的な現象の解明にも取組む予定である.
2024年度に開発技術の効果確認実験を多く実施するとともに、順調に得られている研究成果を広く公表する予定であり、本年度に僅かな余った予算を次年度に繰り越した。2024年度は物品費及び旅費に繰り越し分を充てる予定である。
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